ブドウの栽培管理

生産量日本一を誇る山梨のブドウ。その栽培技術も先進県山梨ならではのものがあります。

この記事は、ブドウを専門に研究されてきた元山梨県果樹試験場長の櫻井健雄氏(平成21年度から24年度までNOSAI山梨技術顧問)が平成24年度に執筆し、旧連合会ホームページのブログ(日記)に掲載したものです。写真も櫻井氏が撮影しました。

平成24年度における実際のブドウ栽培管理の中で執筆された記事です。ご活用いただければ幸いです。
(記事・写真の園地は甲府市東部にあります。)

ブドウ休眠期の管理(3月上旬)

2月27日

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ブドウの芽は3月上旬~4月上旬に発芽期を迎えます。今の時期は眠っている状態なので、この時期を休眠期といいます

休眠期の枝や幹には晩腐病・黒とう病の菌糸やカイガラムシ・ハダニが越冬しています。これらの病害虫は生育期の薬剤散布だけでは完全に防ぎきれないので、この時期、越冬病害虫の密度を出来るだけ減らしておくことが重要です。

晩腐病や黒とう病は巻きひげや切り残しの果梗【写真右】で越冬するので、きれいに取り除きます。カイガラムシやハダニは粗皮の下に潜んでいるので、粗皮はぎを行ってください。
厳寒期を過ぎ、3月にはいったらぜひ行いたい管理作業です。

ブドウの水揚げが始まりました

3月12日

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日中の気温が上昇し、春の気配が感じられる今日この頃です。ブドウの水揚げ(樹液流動)が始まりました。この時期になると、地温の上昇とともに樹液流動が始まります。結果母枝の先端や枝の切り口から水か落ちだしてきます。最初は暖かい日だけその現象が見られますが、そのうち連続して水が落ちるようになります。ブドウの樹は土壌中の水分をたっぷり吸って、樹体に水分が満たされてから発芽を迎えます。

この時期に土壌が乾燥していると、発芽の遅れや不揃いを招き、今後の生育に悪影響を及ぼすおそれがあります。今年は降雨も定期的にあり、土壌水分は今のところ十分ですが、今後発芽期にかけて乾燥するような場合には、発芽まで定期的に灌水を行ってください。灌水の目安は、7日間隔で25ミリ程度です。日差しの多い午前中に行うのがポイントです。

また、そろそろデラウエアのホース栽培が始まります。この栽培は生育促進とジベレリン処理の労力分散をねらいとして行われますが、ホース被覆は十分な水揚げを確認してから行ってください。水揚げが不十分な時期に行うと、結果母枝が乾燥し、発芽不良を招くおそれがあります。

ブドウの発芽期に入りました

4月10日

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ブドウの芽が膨らみ、第1葉が見えた時、全体の芽の20~30%がこのような状態になった時を「発芽期(ほう芽期)」といいます。

発芽が早く、展葉や新梢の伸び方が揃っているのは、前年の貯蔵養分が十分にあり、結果母枝をはじめ樹が充実している証拠です。また、せん定の強さが適当で、しかも発芽期の環境、特に土の養水分が適度であることをうらづけています。このような状態であると、貯蔵養分が樹体の各部分にほぼ均等に分配され、新梢や花房の揃いも良くなります。

発芽の良否を左右するのは、主に次の二つです。

  1. 発芽期の土壌水分
  2. 結果母枝の充実の程度

ブドウが発芽するには、土の温度が12℃以上に上がることが必要であるといわれています。今年は降雨も定期的にあり、土壌水分は十分ですが、低温で経過していますので、発芽は昨年より遅れています。

このような自然的要因の他に、発芽が遅れる原因としては、樹体及び結果母枝の充実が悪い場合があげられます。結果母枝の充実が悪いのは、前年の生育期後半の天候不良、特に長雨のため光合成が十分行われなかった場合と、前年の新梢の徒長・遅伸び、結果過多、病虫害・生理障害による早期落葉などの栽培方法による場合があります。この時期に発芽具合を見て樹相診断を行ってください。

ブドウの芽かき

4月20日

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本年の果樹の生育は全体的に昨年よりやや遅れ気味です。ブドウも2~3日程度遅れて発芽してきています。この時期の発芽の状況によって、樹が正常に生育しているかどうか判断できます。結果母枝の充実が悪いと芽の揃いも悪くなります。不揃いの樹は、昨年の結果量、収穫後の管理等問題なかったか、問題点を明らかにしておく必要があります。

新梢の生育を揃え、樹勢をコントロールするために、芽かきを行います。特にデラウエアや巨峰、ピオーネなどの種なし栽培では、ジベレリン処理時の適正な樹勢確保と作業の省力化のため、生育を揃えるような芽かきが必要となります。樹勢が弱い場合は、早い時期に芽かきを行い、養分の消耗を少なくするようにし、逆に強い場合は芽かきを遅らせるようにします。

○芽かきの時期と方法
芽かきは新梢の伸び具合を見ながら3回くらいに分けて行います。早すぎると新梢の強弱や花穂の有無、良否が判別しにくいことがあります。 

1回目:展葉2~3枚を目安に不定芽、副芽、結果母枝基部の芽を中心に整理します。しかし、晩霜の恐れがある地域では1回目の芽かきは遅らせた方が安全です。

2回目:展葉6~8枚を目安に、花穂を持たない新梢、極端に弱い新梢や強い新梢を中心に整理し、新梢の勢力を揃えるようにします。

3回目:開花直前~結実後を中心に、棚面の新梢の混み具合や実止まり具合を考慮して行い、最終新梢本数に仕上げます。最終的に残す新梢は棚面が暗くならない限り、出来るだけ多くしてください。

ブドウの新梢管理

5月1日

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今年のブドウの生育は2~4日位昨年より遅れているようですが、新梢も順調に生育しているようです。(写真左:新梢伸長期、右:6枚展葉)

1 新梢生育と葉の役割
新梢は日長や光、温度の条件が良ければ旺盛に伸長します。しかし、栄養生長(1)である新梢の生育の途中で、開花・結実など、生産に重要な生殖生長(2)も同時に進行します。この段階での過度な新梢の生育は結実不良、果実肥大不良などの原因となります。

(1)栄養生長:新梢や根などの栄養器官の生長
(2)生殖生長:植物が次世代を残すための花芽分化や開花、受精、成熟にかかわる生長過程

新梢の勢力は剪定の度合いや発芽率、芽かきの程度、土壌条件や施肥などによって影響されます。適正な新梢の勢力や新梢数は品種や栽培方法(種あり、種なし)によっても大きく異なります。このため品種や栽培方法に合った適正な新梢勢力を維持することが、高品質果実生産には重要となります。

葉は光合成によって同化産物を生産する器官であり、枝梢の生育や果実の生長に重要な役割を担っています。日陰で育ったブドウの葉の光合成能力は、十分に日光を浴びた葉に比べて低くなります。曇雨天の連続や新梢の過繁茂によって葉の受光量が低下すると、節間が徒長し、葉色が薄くなることも知られています。棚の下層に見られる葉の黄変は、受光量が著しく低下することで発生します。
限られた面積で同化産物を効率的に生産するためには、葉の受光態勢が良好になるような新梢管理が必要となります。

2 新梢の誘引
新梢誘引は、棚面へ均一に新梢を配置することで、太陽光線を有効利用するために必要な管理です。また、新梢勢力の調整や樹形確立のためにも必要となります。

新梢は早く誘引したり、結果母枝先端に対して返すように誘引すると勢力が抑えられます。そのため、誘引の時期や角度を変えて新梢の勢力を調整します。基本的には、結果母枝先端の新梢は真っ直ぐに誘引し、基部に近い新梢ほど返し気味に誘引します。

4~5月頃に強風の多い地域では、強風による新梢の折損を防ぐために、新梢基部が硬くなってから誘引します。展葉6枚前後で止まる新梢は、無理に誘引せず、棚面に立たせておくことにより、太陽光線を効率的に利用できます。

デラウエアのジベレリン処理が始まりました

5月10日

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いよいよデラウエアのジベレリン処理が始まりました。今年は2~4日遅れで生育が推移していましたが、ここに来て、昨年とほぼ同じか、やや早まって来ているようです。

 第1回目のジベレリン処理の成否が品質を左右します。ジベレリン処理の成功のポイントは正確な処理適期の把握と、適切な効果の判定が挙げられます。適期に処理しても、処理後の乾燥、降雨による再処理の判断を誤ると花振るい等の障害が発生してしまいます。

処理適期の把握
各園ごと、生育の進度は異なります。生育をよく観察して処理を行ってください。適期の把握方法には

  1. 花穂観察による把握:第2新梢の第2花穂を観察して、花穂のパラつき状態や花穂が黄色味を帯びる頃。
  2. 展葉枚数による判断:展葉11~12枚が処理中心となる。
  3. 花粉観察による方法:花粉の離散日を顕微鏡で観察して、その日から10~12日が処理適期となる。
  4. 副梢の展葉枚数による判断:5節目の副梢が1.5枚になった時が適期中心となる。等、いくつかの方法が指導されていますが、①~③については、JAや普及センターの講習会等で情報を収集してください。

4.の方法は、農家の方が畑に行ってすぐ判断できる方法としてお奨めします。デラウエアは展葉3枚目に第1房、4枚目に第2房、6枚目に第3房が着きますから、2房目と3房目の間に発生する副梢が1.5枚になった時(写真左)が適期中心となります。

2 効果の判定
ジベレリンの吸収は、処理時から処理液の乾くまでと、その後の夜間の湿度の上昇により露が返ることによって、再び溶解して効果を継続させる二通りあります。従って、「湿度」が処理効果に重要な役割を果たします。

「処理から72時間後までに相対湿度が80%以上で8時間を経過する」ことが必要と言われています。経過前に連続5mm以上の降雨では再処理となります。
処理後に湿度が不足した場合や降雨にあった場合は再処理を行いますが、地域ごとの指導機関から情報が出されますので参考にしてください。
ここでは簡単に出来る「湿度が十分だったかどうか」の目安をお知らせします。

処理翌日の朝、園に行って露の返り具合を見ます。露が十分返ると、葉の縁に露の水滴が着いてキラキラ光っています(写真右)。このような状態になるとジベレリンの吸収は十分だと判断出来ます。処理翌日に露が返っていなければも翌々日も観察します。3日目の朝になっても露が返ってなければ、再処理を行う必要があります。
今年のジベレリン処理が成功しますよう願っています。

ブドウ(巨峰群品種)の結実管理

5月24日

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ブドウの生育も昨年とほぼ同じペースで進んでいます。今月下旬には巨峰・ピオーネ等の大房系品種も開花期を迎えます。
開花前の花穂の整理と房作り、さらにはジベレリン処理と重要な作業が続きます。天気予報を見ながら計画的に作業を進めていただきたいと思います。

1 摘房
種なし栽培では結実が安定しているため、早めから摘房を行うことが出来ます。誘引が済み次第実施してください。樹勢が弱い樹では早めに実施して、新梢の伸びを促します。
摘房の目安は最終着房数の2~3割増とし、新梢勢力に合わせて、新梢長30cm以下ではカラ枝、30~80cmでは1花穂、80cm以上では2花穂とします。
残す花穂は第1,2花穂のどちらでも良いですが、房尻がスラッとして、出来れば下向きの花穂を使います。
第1,2花穂とも房尻が変形している場合は副穂を利用します。副穂先端の形状も悪い場合は、花穂上部の大きめの支梗を使います。

2 房作り
花穂が伸びきった開花始め期頃が適期です。早めに行う場合は、その後も花穂が伸びるため、やや短めにしてください。
品種によって適正な花穂長は異なります。巨峰、紫玉などは3.5~4cm、ピオーネ、ゴルビーは3.5cm、藤稔、翠峰は3~3.5cmを目安とします。
房尻は原則として摘みませんが、品種により(紫玉など)、あるいは樹勢の弱い樹などは摘んだ方がよい場合があります。
【写真左:巨峰の花房(整形前)、右:同(整形後)】

3 第1回目ジベレリン処理
○処理時期・方法
房作りした花穂の房尻まで咲ききった状態が適期となります。生育が一斉ではないので、開花に合わせて何回かに分けて処理をします。房尻まで咲ききった房が中心となる時期にまとめて処理が出来れば、処理回数を少なくすることができます。しかし、処理が遅くなると有核果の混入が懸念されるため、満開2週間前~開花始め期の間にアグレプト液剤1,000倍を散布しておくことが必要となります。

○注意点
処理濃度やフルメット液剤の加用等については品種ごとに異なる場合がありますので、JA、普及センター等の指導を参考にしてください。
処理後に降雨があると効果が劣りますので、降雨の心配の少ない日に処理を行うか、降雨の恐れのある場合は、処理後ロウ引きのカサをかけてください。

<ベと病に注意>
5月24日付け 山梨日日新聞に「べと病 峡東、峽中で発生 県が薬剤散布呼び掛け」という記事が載っていました。

すでにべと病の発病が確認されているようです。特に葉だけではなく、開花前の花房にも発病が見られています。園をよく観察して、発病葉、発病花房を取り除き、防除歴を参考にして、10日以内の間隔で薬剤散布を徹底するよう心掛けてください。

デラウエアの第2回目ジベレリン処理

5月29日

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デラウエアの第2回目ジベレリン処理は、満開10~15日後に100ppmで単用処理します。処理時期に比較的幅があるため、降雨の心配のない日を選んで処理を行ってください。写真はデラウエアの満開時(5月22日撮影)のものです。

○着色障害の出やすい園では 
例年、「ゴマシオ」「ツートンカラー」と呼ばれる着色障害が発生する園では、第2回目ジベレリン処理時に硫酸マンガン液肥を使用します。
軽症園ではジベレリン処理時に、処理液2リットル当たり硫酸マンガン14.5mlを加用し、重症園では、それに加えて、処理2~3日前に水200リットル当たり硫酸マンガン730ml加えた液を10a当たり200~300リットルを散布します。

しかし、これは応急処置であり、着色障害は土壌pHが高かったり、土壌の過湿・過乾等が障害を引き起こす要因となりますので、日頃の土壌管理を十分行って、健全な園に育てていくことが重要です。

○再処理基準は
第2回目処理は、梅雨もしくは走りづゆと呼ぶ湿った気象条件下で実施されるのが一般的です。処理期間には余裕がありますので、再処理はしなくてすむ方向で作業してください。 
しかしながら、処理後ににわか雨等に遭ったら、下記の基準で再処理してください。/p>

<2回目処理再処理基準>
処理液乾固後、1時間経過していれば降雨量10mmまでは、2時間経過していれば20mmまでは、3時間経過していれば30mmまでは再処理は不要となります。再処理濃度は50ppmで行ってください。

○ビックリ玉に対しては
第1回目ジベレリン処理が早すぎた場合や、処理後低温で経過した時、さらに樹勢が強いときには、果粒が大きく細長く、表面がでこぼこになることがあります。これを「ビックリ玉」と呼んでいます。
ビックリ玉になると、結果過多になり、しかも着色が悪く果粉もきれいにのらなくなります。さらに果皮も薄くなり、収穫期の少量の降雨でも裂果をおこしてしまいます。
ビックリ玉になってしまった場合は、第2回目ジベレリン処理濃度を50ppmとし、少し早めに処理をすると、正常に近い玉張りになります。

ブドウの摘粒

6月7日

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 摘粒はブドウの栽培管理の中で最も労力のかかる作業であり、この時期に確保できる労働力によって栽培規模が決まってしまうといっても過言ではないでしょう。果房重や房型、果粒肥大などの品質や商品性に大きく関わります。
摘粒が遅れると作業効率が著しく低下します。特に種なし栽培で第2回ジベレリン処理後、果粒が急激に肥大するので、作業が遅れないようにしてください。
摘粒には「予備摘粒」「仕上げ摘粒」「見直し摘粒」があります。
(写真は左から、「摘粒前」「予備摘粒」「仕上げ摘粒」)

○予備摘粒
摘粒作業の効率化と果粒肥大のために、まず予備摘粒を行います。第1回目ジベレリン処理が済みしだい、生育が進んだ果房から予備摘粒を行います。大房になっている場合は、予備摘粒前にまず軸長を揃えます。
 例えば、巨峰で目標果房重を500gとすると、軸長は7cm前後となります。着粒状況を見ながら、上部支梗を切り下げるか房尻を切り詰めます。

その後、内向き果、小粒果、キズ・サビ果などを除きます。果粒肥大の早い段階では、支梗単位に摘粒ができる品種があるので(キング デラ、サニールージュ、ロザリオビアンコなど)、ぜひ試してみてください。

○仕上げ摘粒
第2回目ジベレリン処理が済みしだい、ただちに行います。ジベレリン処理後は急激に果粒が肥大するため、作業が遅れるほど効率が悪くなります。
この時には、ハサミの先で果皮を傷つけないように注意してください。
房型は、密着した円筒形に仕上げます。果梗が太く、果帯の大きい果粒を中心に、外向き果を配置します。最上段の支梗には上向き果を2~3粒残しておくと、ボリュウーム感のある房に仕上がります。

○見直し摘粒
カサ・袋かけの時に見直し摘粒を行います。ただし、仕上げ摘粒が適正に行われていれば必要ありません。
しかし、果粒肥大が良好な場合は、果密着や裂果防止のため見直し摘粒を行います。肥大が進んでいるため、ハサミ傷やブルームを落とさないように注意してください。
甲斐路系品種やロザリオビアンコなどは最終着粒数の1割程度多めに残し、成熟期に縮果症がひどい果粒や肥大不足の果粒などを見直し摘粒します。

<摘粒後は出来るだけ早くカサ・袋かけをしましょう!>
摘粒前後の6~7月は晩腐病の感染期であり、摘房や摘粒終了後、出来るだけ早くカサ・袋かけを行うことが、耕種的防除として重要です。
摘粒が遅れる場合は、とりあえずロウ引き傘をかけておくと良いでしょう。

梅雨期のブドウ栽培管理

6月14日

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今年もいよいよ梅雨に入りました。平年より1日遅く、昨年より13日遅いとのことです。雨量の多い梅雨になるのか、少ない空梅雨になるのか分かりませんが、いずれにしてもじめじめして曇雨天が続き、病害虫の感染、発生の時期になります。天気予報を参考にしながらの計画的な薬剤散布、畑が過湿にならないような排水対策等、しっかりと行ってください。

○病害虫防除
梅雨にはいると曇雨天の日が続き、園地の湿度が高まりますので、べと病やうどんこ病、灰色かび病などが発生しやすくなります。また、6月の降雨量が多い年では、晩腐病の1次感染が多くなります。果房に雨が当たらないように、早めのカサかけが必要となります。(写真はデラウエアの果房)

摘粒が間に合わない方は、取り敢えずロウ引きのカサをかけておくことも晩腐病予防のためには必要となります。
害虫ではスリップスやカイガラムシの発生時期ともなります。いずれの病害虫についても、多発してからの防除は非常に困難となるため、天気の状況をみながら、早めの防除に心掛けてください。
特に病害防除では、次回散布予定日に降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。

○土壌水分管理

降雨が多く圃場が滞水する場合は、土壌中の酸素不足により、根腐れの発生や、根の活力低下により生育への悪影響が現れる恐れがあります。

滞水しやすい圃場では、前もって周囲に排水溝などを設置し、滞水を防止してください。

○新梢管理
新梢が過繁茂しすぎると、病害虫の発生はもちろん、果粒肥大にも悪影響を与えます。新梢が混んで棚面が暗い場合には、誘引の見直しを行い、棚面に均等に配置します。見直しを行ってもなお暗い場合には、カラ枝となっている強い枝や、基部から強く徒長した新梢を切除し、棚下に木漏れ日が1~2割程度差し込む明るさを確保してください。
また、この時期も強く伸びている新梢は、先端を軽く摘心するとともに、伸び続けている副梢も2~3葉残して切除してください。

ブドウの果粒肥大

6月26日

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ブドウの果粒は、雌しべの子房の部分が肥大したものです。果粒の生長を、果粒の大きさや重量などの変化で示すと、多くの果樹類と同様に「S字曲線」で示されます。
肥大の過程は、開花期以降に急速に肥大する第Ⅰ期、その後の一時的に肥大が停滞する第Ⅱ期、再び肥大が進む第Ⅲ期に分けることができます。

第Ⅰ期:落花直後から、果粒内部の細胞分裂と肥大が盛んな時期であり、十分な土壌水分が必要となります。また、この時期の摘粒によって果粒数を適切に制限することで細胞数が増加し、果粒肥大が促進されます。一般的に摘粒時期が早いほど、その効果が高いとされ、前回お話しした予備摘粒の有効性が認められています。

第Ⅱ期:硬核期とも呼ばれ、一時的に種子の形成に養分が供給され、果粒の肥大が停滞する時期とされています。しかし、種子を形成しない無核栽培においても不明瞭ながらもこの停滞する時期は存在します。

ベレーゾン期:第Ⅱ期から第Ⅲ期に入る時期をベレーゾンと呼び、果実の生長は転換期になります。果粒の軟化に加え、糖含量の増加と酸含量の減少、アントシアニン(色素成分)の生合成などの大きな生理的な変化が起こり始めます。「水が回る」とか「水を引き込む」などとも呼ばれています。

赤や黒の着色系品種はこの時期に着色が始まりますが、色が飛び始めてから、デラウエアではおよそ20日、巨峰では30日後が収穫始めになると言われています。参考にしてください。

第Ⅲ期:果粒に養水分が急激に集積し、細胞が肥大する時期にあたります。そのため、この時期の水分管理が不適切であると、裂果の発生を助長します。

【写真は現在の果粒肥大状況。左から「巨峰の果粒」「ピオーネの果粒」「シャインマスカットの果粒」】

ブドウの着色について

7月5日

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「デラウエア」の着色が始まり、果房がうっすら赤みを帯びてきました。間もなく巨峰も色が飛び始めるでしょう。
(写真左:デラウェアの着色始め、右:巨峰の“飛び玉”)

ブドウにとって「着色」は非常に重要なポイントになります。最近は異常な高温や多雨、曇雨天等の影響により、不良になりやすい状況になっています。

現在、果樹試験場において着色不良の原因究明と着色改善技術の開発に取り組んでいます。
 その中で、「温度」だけでなく、「光」や「湿度」「土壌水分」などの環境要因の影響を複合的に受け、着色不良が発生することが明らかになってきました。
これらの影響によって、ブドウの糖度が上がらなかったり、樹勢が強くなりすぎたり、さらには植物ホルモンのバランスが崩れたりして、色素(アントシアニン)の合成、蓄積の低下につながると考えられています。

これまでの検討で、赤色系品種では着色に対する「光」の影響が大きいことが明らかになっています。
 そこで、着色期に果房上部の葉を除去する摘葉処理を行うと着色が向上することがわかりました。摘葉と併せて、新梢先端や副梢の摘心、誘引の見直し等の新梢管理を行って、棚面を明るくすることも必要となります。

一方、「ピオーネ」などの黒色系品種では摘葉処理による着色向上効果は見られないこともわかりました。黒色系品種では着色における「光」の影響は小さく、むしろ「温度」や「結果過多による糖度不足」の影響が大きいと思われます。
気温が高く推移する場合は、夕方以降に圃場への散水や棚上散水により、圃場の温度を下げる工夫も必要です。

また大房や結果過多で着色が遅れている園では、房型が悪い果房や、特に着色の遅れている果房を中心に早期に見直し摘房をすることも必要です。

梅雨明け後のブドウの管理

7月19日

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梅雨が明けると本格的な夏となります。この時期はブドウの早生~中生品種はベレーゾンから着色期に入ってきています。遅い品種でも硬核期になっています。

梅雨明け後は高温と乾燥に特に注意する必要があります。
果粒肥大期(ベレーゾン期前)の高温により、直射日光に当たった果粒は日焼けを起こしやすくなります。また、着色始め期から高温で経過すると着色不良、遅れを招きます。

また、高温になることで、葉から多量の水分が蒸散します。この時期の急激な乾燥(水分不足)により葉が褐変したり、果粒がしおれてくることがあります。 気温そのものは下げることは出来ませんが、影響を最小限にすることは可能であり、気象の推移に合わせた的確な管理が重要になります。

主な技術対策

○定期的な灌水を励行する。灌水間隔は5~7日とし、1回の灌水量は20~30mmを目安とする。

○灌水施設の無い園では、樹冠下を中心に1樹当たり約200mlを灌水し、敷きわら等のマルチをして土壌からの蒸散を防止する。

○草生栽培園では水分競合を防ぐため、早めに草刈りを行う【写真左】。

○直接果房に日が当たる場合は、クラフト紙などの傘をかけ、果房が高温にさらされないようにする【写真右】。

○着色期に高温が続く場合は除袋を早めたり、夕方に圃場への散水や棚上散水を行う

ブドウの収穫適期のめやす

8月7日

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デラウエアの収穫も終盤となり、続いてキングデラ【写真左】、サニールージュ【同中央】、巨峰【同右】等の収穫の時期に入ってきています。

ブドウの収穫時期は、外見だけで判断するのは難しいです。食味を重視した適期収穫を心掛けることが重要です。そのため、着色と併せて糖度(Brix)と酸度(pH)あるいは酸含量(酒石酸g/100ml)を調査し、収穫時期を判断します。品種ごとに出荷基準が定められているので、基準を満たしてから収穫を始めてください。

ブドウの食味は糖度と酸含量のバランスで決まります。糖度を酸含量で割った数値を『甘味比』と言い、食味の目安になります。一般的には、甘味比が25以上が収穫の目安となります。

収穫作業は、なるべく果実温度が低い早朝の涼しい時間帯に行うと良いです。特に高温乾燥が続く時には、日中の高温時に収穫した果実は日持ちが悪くなるので避けてください。

ブドウ樹は貯蔵養分の蓄積期です

10月1日

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収穫の終わったブドウの樹はゆっくり休んでいるようですが、根は成長を続け、葉は光合成活動を続けています。

ブドウの根は年2回生長の山があります。1回目は春から夏にかけて大きな山で、2回目は9~10月の山で、1回目ほど大きくはありませんが生長します。
秋根の働きは肥料分を吸収して地上部に送り、葉の光合成機能を高めています。さらに、葉で光合成によって生産された炭水化物を翌春まで貯蔵する役目を持っています。

収穫後は「お礼肥」、「お礼消毒」等により、根の生長を助け、葉を健全に保つことが必要となります。それによって貯蔵養分を高めることが出来ます。
 今回は貯蔵養分について触れてみたいと思います。

○貯蔵養分とは
秋に葉で生産された同化養分が、枝・幹・根に移り、でんぷんや糖などの炭水化物として貯蔵されているものをさします。

○貯蔵養分の重要性
翌春の発芽や新梢の発達は、前年から樹体内に確保された貯蔵養分によってまかなわれています。

つまり、ブドウにおける果実生産の出発点は、発芽・展葉期ではなくて、貯蔵養分の蓄積期であるといえます。
つまり、貯蔵養分の蓄積量の増加は、訪れる冬に備えて樹体を保護し、次年度の春の目の発達、新梢の初期の伸び方を左右します。そのため、貯蔵養分の生産工場である葉を早く落とすことになると、枝は枯れ込み、翌春の発芽は遅れて最初からつまづくことになります。

ブドウ落葉期の樹相診断

10月15日

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10月の終わりから11月にかけては落葉期に入ります。落葉期の葉の色の変化、新梢の充実度をよく観察し、今年の栽培管理が適切であったかどうか反省してみましょう。

10月の終わりから11月の初めにかけて、気温の低下とともに葉は黄変し落葉します。黄変のしかたによって、栄養状態がある程度診断できます。のぞましいのは、樹全体が黄色に変わって、一斉に落葉する状態です。この時期になっても緑色が濃く、霜が降りて褐変し落葉が遅れるようでは、窒素を遅くまで吸収していたことを物語っています。

葉色とともに、もうひとつこの時期の診断の目安となるのは新梢の充実度です。枝の充実度は褐色の程度でわかり、充実した枝はほとんど先端まで褐変しています。
この時期に緑色なのは、窒素の遅効きによるいわゆる遅伸び状態、負担力のない弱枝に着果させた場合、および枝が重なり合って日照不足になった場合です。遅伸びの場合は後半に伸びた部分が緑色で、成らせすぎの場合は新梢の基部から緑色となります。このような充実の悪い枝は、耐寒性が弱く、枯れ込みやすくなります。

(画像は『図解果樹園芸』実教出版より引用)

ブドウの凍害を未然に防ぎましょう

11月05日

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甲府盆地にも間もなく厳しい冬がやってきます。果樹は冬の寒さにじっと耐え、やがてやってくる春に備えて準備をしています。この間の主な気象災害と言えば凍害と雪害があります。今回はブドウの凍害について考えてみましょう。

果樹の中でも特にブドウは冬季の低温や乾燥により、凍害の被害を受けやすくなります。凍害を受けると、軽症でも発芽の遅れ・不揃い、重症になると結果母枝の枯れ込みなどが発生し、樹勢や樹形が乱れてきます。最悪の場合、主幹部に亀裂が入り枯死に至ることもあります。

発生しやすい品種群や条件などは次の通りです。

  1. 欧州系品種や若木では注意が必要である。
  2. 徒長的な生育をしている場合や早期落葉、結果過多、遅伸び等で貯蔵養分の不足している場合。
  3. 11月以降冬季に降雨が少なく、土壌や樹体が乾燥している場合。
  4. 低温が続き、主幹部や枝が長時間低温に遭ったり、主幹地際部が凍結した場合。
  5. 2月以降、耐寒性が低下した後に、寒波などにより低温を受けた場合。

凍害は一度発生すると、数年にわたり生産に影響を与えるとともに、再発しやすくなるため、事前の対策をしっかり行ってください。

事前対策

  1. 主幹地際部の凍結が最も悪影響を与える。主幹の周囲1.5~2mほどに敷ワラなどを行い、土壌の凍結と乾燥を防止する。
  2. 太枝の剪定の切り口には癒合剤を塗布し、乾燥や枯れ込みを防ぐ。
  3. 少雨・乾燥が続く場合は、凍結層が出来る前に灌水を行う。

(画像は、凍害発生の仕組み)

大雪による被害に注意!

12月03日

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太平洋岸を移動性低気圧が通過する気圧配置になると、山梨県では大雪になることが多いと言われています。特に本州と八丈島の間を通過する場合は、北からの寒気と南からの湿った空気が山梨県付近でぶつかり合うため、大雪になりやすくなります

大雪は2~3月に多くみられますが、近年は1月から前述した気圧配置が出現して、大雪になることがあります。
大雪になるとブドウ棚の倒壊につながるため、被害は大きくなります。
天気予報の情報を基に事前対策を行えば、被害は未然に防ぐことができます。

事前対策

  1. ブドウ棚の杭通しの控え線や隅杭等の点検・補修を予め行っておく。
  2. 加重のかかりそうな主枝、亜主枝等に補助的に支柱をたてて、棚が下がらないように補強しておく。
  3. あらかじめ荒切り剪定を行って、棚への積雪を減らすようにする。
  4. 棚面に雪が積もったら、出来るだけ早く除雪する。
  5. 防鳥網が設置してある園では必ず除去しておく。
  6. 加温ハウスでは雪が積もる前から暖房機を稼働させるとともに、二重カーテンを開けて融雪に努める。

もしも雪害が発生してしまった場合は、指導機関の指示に従い、棚の補修、樹体の保護等、事後対策を徹底してください。

【写真】
左:倒壊したブドウ棚(融雪後の様子)
右:倒壊したブドウハウス

ブドウ休眠期の管理(1~2月)

01月07日

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秋に落葉した後、芽がふたたび発芽・伸長するには、いちど冬の寒さに一定期間あわせる必要があります。この期間の休眠を「自発休眠」といい、この休眠があけると環境が良ければ発芽します。しかし「自発休眠」があけても自然の状態では気温が低いため、芽は発芽適温になるまで休眠を続けます。この休眠を「他発休眠」と呼びます。
「自発休眠」が完了する時期は通常1月下旬~2月上旬となります。この時期までは耐寒性も強く、じっと寒さに耐えています。

春を迎え暖かくなると、発芽が始まりますが、高品質な果実の安定生産には、良好な発芽をさせることが重要です。それにより、種なし栽培でのジベレリン処理効果の安定や、種あり栽培での結実確保などが図られます。
この時期に行う発芽率向上に向けた作業を紹介します。

① 発芽促進剤による生育促進と発芽率の向上
シアナミド剤(CX-10かヒットα)やメリット青などの結果母枝への散布や塗布により、発芽率を向上させたり生育を早めることが出来ます。シアナミド剤は前年12月までが処理適期とされていますので、1月以降はメリット青の塗布をお奨めします。(写真左:メリットローラーによる塗布)

処理時期は、生育促進を目的とする場合は1月上旬~中旬、発芽率向上を目的とする場合は2月上旬~3月上旬とします。使用濃度は巨峰・ピオーネは原液、デラウエアは2倍液とします。
処理効果を安定させるため、処理後3日程度は雨マークのない日を選んで処理してください。

② 芽キズ処理による発芽率の向上
厳冬期を過ぎて、樹液の流動(水揚げ)前に徒長的な結果母枝を中心に芽キズ処理を行うと発芽が良くなります。
処理方法は、結果母枝の先端と基部を除いた発芽させたい芽の先端側5~10mmくらいの部分に、結果母枝の直径の三分の一程度の深さ(形成層にかかる程度)に切れ込みを入れます。処理には専用の芽キズバサミが効率的ですが、剪定バサミでもかまいません。(写真右:芽キズバサミによる処理)

処理時期は、水揚げの始まる直前が適期であり、早場地帯で2月中旬、中間地帯で2月下旬から3月上旬、遅場地帯で3月中旬が目安となります。

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