令和3年度水稲・大豆に発生した病虫害の対策について

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水稲

いもち病

 令和3年度は、梅雨明け後も夕立が多かったことや、出穂期の8月中旬及び9月上旬の長雨、日照不足の影響により、葉イモチから穂イモチを発症する事例が県内全域で多く見られました。

 イモチ病は、発生してからでは抑えることが難しい病気なので、特にイモチ病に弱いコシヒカリなどの品種では、田植前の育苗箱への薬剤処理、本田期での予防散布を徹底することが防除のカギとなります。万が一、葉イモチが認められた場合は、穂への発病を抑えるため発生初期段階で治療効果のある薬剤を散布してください。

 また、窒素が多いと発生を助長するので多肥は控えるとともに、ケイ酸質肥料の施用で抵抗力をつけることも効果的です。

〇主な薬剤

  • 育苗期施用(移植時までに1回のみ散布)

  (殺 菌 剤)オリゼメート粒剤、フジワン粒剤

  (殺虫殺菌剤)Dr.オリゼプリンス粒剤6、オリゼメートプリンス粒剤、ブイゲットアドマイヤー粒剤、ブイゲットバリアード粒剤、ルーチンアドスピノ箱粒剤など

  • 本田期施用(本田では2回以上散布できない薬剤が多いので要注意)

  オリゼメート粒剤、フジワン粒剤、コラトップ粒剤5、ブラシン粉剤DL、ブラシンフロアブル、トライトラムフロアブルなど (下線の薬剤は治療効果のある薬剤)

もみ枯れ細菌病

 出穂期に台風接近により風が強く、台風通過後高温となった地域を中心に、籾が褐変する症状が多く見られました。現地調査すると、ほとんどが「もみ枯れ細菌病」でした。

 もみ枯れ細菌病は、保菌した種子が伝染源で、生育時期により苗腐敗、株腐敗、もみ枯れの症状が現れます。もみ枯れ症状については、昨年の被害籾や藁もイネ移植時に伝染源となり、出穂後の台風による風雨によって園全体に二次伝染します。

 もみ枯れ細菌病は、苗腐敗、株腐敗、もみ枯れの症状によって防除の時期、方法が異なり、いずれも発生後の防除は困難ですので、発病田の種子は使用せず、種子消毒や育苗箱への薬剤散布だけでなく、生育期の本田への薬剤散布による予防防除も徹底してください。

〇主な薬剤

  • 種子消毒(200倍に希釈した薬液に24時間浸漬)

  テクリードCフロアブル、スポルタックスターナSE

  • 育苗期施用(移植時までに1回のみ散布)

  (殺 菌 剤)オリゼメート粒剤

  (殺虫殺菌剤)Dr.オリゼプリンス粒剤6、ブイゲットアドマイヤー粒剤、ブイゲットバリアード粒剤、ルーチンアドスピノ箱粒剤など

  • 本田期施用(本田では2回以上散布できない薬剤が多いので要注意)

  ブラシンフロアブル、ブラシン粉剤DL、バリダシン液剤5、オリゼメート粒剤(下線の薬剤は治療効果のある薬剤)

内頴褐変病

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 もみ枯れ細菌病に似た症状で、籾の内頴部分だけ褐変する「内頴褐変病」も見られました。多発すると不稔や粒厚の減少、茶米などの不完全米となります。  

 感染期間は、出穂期から出穂2、3日後までの短い期間で、このころに高温・多湿条件が揃うと発生しやすく、令和3年度では、開花期に台風が接近し風が強かったこともあって多発したものと思われます。

 発病の有無にかかわらず大半の種子が保菌しており、収穫後の稲刈り株でも越冬します。発生してからでは防除が困難な病気ですので、いもち病やもみ枯細菌病と同時防除を兼ねて予防散布してください。

〇主な薬剤

  • 種子消毒(200倍に希釈した薬液に24時間浸漬)

  テクリードCフロアブル、スポルタックスターナSE

  • 育苗期施用

  (殺虫殺菌剤)ブイゲットアドマイヤー粒剤、ブイゲットバリアード粒剤、ルーチンアドスピノ箱粒剤、Dr.オリゼフェルテラ粒剤など

  • 本田期施用

  ブラシンフロアブル、ブラシン粉剤DL、スターナ水和剤、スターナ粉剤DL、ダブルカット粉剤3DLなど(下線の薬剤は、イモチ病との同時防除が可能)

斑点米カメムシ

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 近年、温暖化に伴いカメムシ類の発生、被害が多くなっています。カメムシは籾を吸汁して斑点米を発生させますが、寄生数が多いと不稔になり、ほとんど収穫できない場合があります。

 対策としては、畦畔や水田周辺のイネ科雑草から出穂期に本田に飛来することや水田内のヒエやホタルイの穂がカメムシの誘因源、発生源になることから、出穂10日前までに畦畔等の草刈り、水田内の除草をしてください。

 本田への発生が認められた場合は、殺虫剤を穂揃期と乳熟初期(穂揃期7~10日後)の2回散布してください。

〇主な薬剤

 ベストガード粒剤、アルバリン粒剤、アルバリン顆粒水和剤、スタークル粒剤、スタークル顆粒水和剤、スミチオン乳剤、トレボン乳剤など(粒剤は、出穂期~出穂7日後までに散布し、止水した湛水状態で散布し、かけ流しはしないこと)

ワキ・ガス害

 田植後気温が上がってくると、イネの分けつや葉の伸長が悪く、下葉の黄化や赤枯れ症状が見られるとの相談があります。現地調査すると、ワキによる有害ガスが原因と思われる事例が多く見られます。

 これは、藁などの有機物が腐らずに残り、田植え後の温度上昇により有機物の分解が進み土壌が異常還元(無酸素状態)になったことで有害ガスが発生し、イネの根が傷むことにより生育に支障が出る現象です。

 対策としては、堆肥を投入する場合は完熟したものを入れ、稲刈り後に未分解の藁を入れる場合は、地温が15℃以下では藁の分解が進まないので、稲刈り後できるだけ早く漉き込み、藁の分解が進むように石灰窒素20㎏/10aを藁と一緒に漉き込んでください。この場合、石灰窒素の窒素分は藁の分解に使われるため窒素肥料として考慮する必要はありません。

 田植前の耕うんは、15㎝の耕深を確保して根の生育と活力が維持できるようにしましょう。  また、ワキの発生を抑えるには、水管理が最も重要です。一般的な水管理は図1のとおりですが、晴天・高温が数日続くような場合は2~3日おきに水を入替えし、根に酸素を供給しましょう。ワキの発生が見られたら、水交換、夜間落水、田干し(1~2日程度の落水)を行い、ワキの軽減に努めましょう。

 ワキの解消後、生育が遅延し、葉色が黄色い場合は、追肥として窒素成分で2㎏/10a(NK化成17の場合、12㎏/10a)投入して生育回復に努めてください。

大豆

さび病

 昨年10月、身延町で栽培されている「あけぼの大豆」の葉が黄変し早期落葉する症状が多数見られました。現地調査した結果、ダニとさび病が原因で、さび病については9月~10月初めの天候不順が発生要因と思われます。

 さび病は初秋から晩秋にかけて葉に多く発生し、多発すると早期落葉するため、初発が早いと減収につながります。

 対策としては、9月中旬までに初発が認められた場合は、殺菌剤を最低2回散布が必要です。なお、NOSAIで実施している無人ヘリコプター防除では、さび病に登録のある農薬が無いので、別途個別に手散布する必要があります。

〇主な薬剤

 アフェットフロアブル、イデクリーン水和剤、園芸ボルドーなど