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第15回やまなし農業・農村シンポジウムに行ってきました!

2024年01月24日 その他の話題 農政情報

 1月20日(土)に山梨県立文学館で「第15回やまなし農業・農村シンポジウム」が開催されましたので、行ってきました。

 このシンポジウムは、山梨県農政部耕地課が毎年テーマを変えて開催しているもので、今年のテーマは「地域農業の未来計画」です。農業経営基盤強化促進法には「地域計画」として次のとおり規定されていて、令和7年3月までが期限となっています。

(地域農業経営基盤強化促進計画)

第十九条 同意市町村は、政令で定めるところにより、前条第一項の協議の結果を踏まえ、農用地の効率的かつ総合的な利用を図るため、当該協議の対象となった農業上の利用が行われる農用地等の区域における農業経営基盤の強化の促進に関する計画(以下「地域計画」という。)を定めるものとする。

 当日は、農業委員さんをはじめとした県内の農家さん、市町村や関係機関の職員など270人が出席しました。すべての農家さんに関わる、とても大切な内容ですので、当日来られなかった方は、ぜひこの記事をお読みいただければと思います。

(1)主催者あいさつ(長田副知事)
 山梨県の農業人口は平成27年から令和2年までの5年間で4,200人減少している。一方で果樹経営は好調だが、新規就農者にとっては条件のよい農地を確保することが困難な状況も。優良農地を、次の世代へ着実につなげていくために「地域農業の未来計画」が必要。地域が目指す農業を市町村が計画にできるよう後押ししていく。

(2)基調講演

「地域農業の明日を考える~どうする地域計画!!」(澤畑佳夫氏)

 地域計画とは、農地活用の未来設計図のこと。実質化された人・農地プラン(農業の未来設計図)に目標地図を追加したもの、と捉える。

 遊休農地の解消は「治療」なので、「予防」することが重要。そのためには、まず現状の農地や地権者、耕作者のデータを「見える化」して将来を予測し、地域で合意形成をしていく必要がある。

 地域での合意形成を行うには、きちんとした準備と段取りが必要。①市町村の庁内での協議・合意、②関係機関(JAや土地改良区など)との協議・合意、③農業委員・農地利用最適化推進委員との協議・合意、④認定農業者・農業法人との協議・合意、⑤地域での合意(座談会スタート)。

 座談会の進め方にも、①多様なメンバーを集める、②意見を聴き合う約束、③楽しい雰囲気作り、④開催後のフィードバック、⑤報道の活用、など、いろいろなコツがある。

 今、問われているのは①覚悟(本気度)、②女性と若者参加、③スピード感。やらない理由を並べている間にも負債(遊休農地)は増えている。「できるかできないか」ではなく「やるかやらないか」。

(3)パネルディスカッション(コーディネーター 澤伸恭氏)

地方考夢員🄬研究所 代表 澤畑佳夫氏

 「思いを地域計画にまとめていく」

 座談会には、まず来てもらうところから。チラシの作り方から工夫が必要。薄々わかっていることも「見える化」して絵やグラフで示す。行政の参加者も背広ネクタイNGで話しやすい雰囲気づくりを。開催後は速報を出すことも大事。やり方にはスキルが必要なので、専門家に協力してもらおう。

 残り時間は15カ月。優先順位を付けて行う。まず、スタートできる地域からスタートを切ることが重要。

市川三郷町農業委員会 会長 渡邊千雪氏

 市川三郷町では、コロナ禍でも書面等活用して3箇所で地域計画に取りかかった。高齢化や担い手不足が課題。新規就農者はいるが、倉庫や作業場不足でやめてしまうケースも。

 農地の集約は難しく、集積の方向で進めている。10年以内に農地を貸したいかどうかアンケートをとった。貸したい農地は4haだったが、実質は5年くらいの間に7haが利用権設定された。

長野市農業委員会 会長 青木保氏

 地域で農業の話題をポピュラーにできるようにすることが大事。有害鳥獣対策なども、農家だけでなく、全戸で負担している。

 70代以上の方が中心の地域は、5年後、10年後に担い手がいなくなる状況がすぐ来る。今が地域計画を作る最初で最後のチャンス。

 無人草刈り機等のIT機器を使用したスマート農業は、現状の農地では困難。果樹栽培では、毎年高齢者がはしご仕事でケガをしている。23haで大胆に農地集約して基盤整備した。14億円かかったが、1筆の平均3aの農地が30aとなった。そんな発想も必要。

(株)アルマ 農家体験民宿アシガワ・デ・クラッソ

担当 山本真氏

 芦川は中山間地で高齢化率65%。担い手がいないことが課題。座談会には農家だけでなく、地域に関わるいろいろな方に入ってもらうことが大事。いろいろな専門家の指導を仰ぐことができる。地域の事業者、特に観光や商工は農業に直結するので、関わってもらうべき。ファシリテーターは農業分野以外にも各地にいる。やり方がわからない場合は協力してもらい、早く行動を。

(一社)山形県農業会議 主任 髙野浩之氏

 合意形成の話し合いのキーパーソンになる「ファシリテーター」を育成する研修会を開催している。「地域計画」策定の話し合いの進め方をマニュアル化したものを提供しているので、必要であれば山梨県担い手・農地対策課へご連絡を。

 地域で農業の話がされないのは良くない。他人事から自分事にすることが大事。いかに優良農地を未来へつなげていけるか。「人財」になる人材を早く育成していく必要がある。個人戦ではなく団体戦。意見を聴き合うことはとても大事。

 データの分析は大事。課題だけでなく、地域の強みも資料へ盛り込む。小学生が参加したこともある。意見を出してもらう場と、調整する場をわけることも大事。

 参加している農家のみなさんは、資料にメモを取りながら真剣に聞いていました。農業者の高齢化や、農業・農地の承継は全国どこでも共通の課題ということもあり、大きくうなずきながら聞き入っている方もいましたよ。

 地域計画は、今後いろいろな事業の採択要件になる可能性もあるとのこと。お子さんやお孫さんの将来のためにも、「今」それぞれの地域で取り組みましょう。

 地域計画についてのお問い合わせは

 山梨県農政部担い手・農地対策課 TEL055-223-1621