果樹農家だより

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NOSAI果樹農家だより

果樹農家の皆さまへ、時季ごとの耳より情報をお届けする「NOSAI果樹農家だより」を発行しています。農作業の参考にしてください。

最新号

NOSAI山梨果樹農家だより

No.1
2024.5

台風の接近に注意してください

台風の接近しています。また、台風通過後も曇雨天、低温が続くので、ブドウのべと病・黒とう病及びモモのせん孔細菌病の発生に注意しましょう。

ブドウ べと病

  • 感染から発病まで7~10日と短いので、防除暦に準じて散布間隔が10日以内になるよう予防散布を徹底する。
  • 散布予定日に降雨が予想される場合は、散布を延期せず降雨前に散布する。また、散布後の連続的な降雨や降雨量が多いと薬剤の効果が低下するので、散布間隔を短くする。
  • 農薬散布時に雨や夜露で葉が濡れている場合は、SSの送風ファンなどで露を払ってから散布する。
  • 発病した房や葉を見つけたら、すぐに切り取り園外に持ち出し、二次感染を防ぐこと。
甲斐路

ブドウ 黒とう病

  • 病原菌は降雨により伝染するので、散布予定日に降雨が予想される場合は、散布を延期せず降雨前に散布する。散布の際は散布ムラのないよう十分量を丁寧に散布する。
  • 定期的に園内を見回り、病斑が見られる葉や新梢、果実、巻きひげは見つけ次第取り除き園外に持ち出し処分する。
シャインマスカット

モモ せん孔細菌病

  • 罹病枝、発病葉、発病幼果が伝染源になり、これらを残したまま強い風や雨が続くと感染が拡大する怖れがある。罹病枝などは見つけ次第せん除し、薬剤防除を継続的に徹底する。
  • せん孔細菌病の果実での潜伏期間は5月頃で2~3週間、6月頃で40日程度あるとされ、春型病斑がある場合はすでに感染している場合がある。袋掛け前に前回の散布から間隔があき、降雨が予想される場合は降雨前に追加散布を行う。
浅間白桃

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.98
2024.3

隅杭マニア

  • 甲州式ブドウ棚の存在は令和4年に峡東地域の果樹農業システムが世界農業遺産に認定される大きな要因となりました。
  • ブドウ棚内の構成部の中でも隅杭は大型で重い棚を四隅で支えており、ブドウ棚の「」と言える部分です。
  • 園の傾斜や樹の管理状況に応じて、ペンチを使って作業する職人の個性が現れやすい部分でもあります。
  • 近年はブドウ価格が安定し、栽培熱が向上しているため新規に開設するブドウ棚が増加しています。
写真.甲州式ブドウ棚6園の隅杭

えそ果病防除の徹底を!

  • 最近、ブドウえそ果病の問い合わせが増加しています。
  • 本病はウィルス病の一種です。葉はモザイク症状を示し、新梢は節間が短縮し、果実表面から内部に壊死がみられます(図)。
  • 巨峰系品種に多く症状が認められます。
  • 対策は、ウィルスフリー樹の確保とともに、石灰硫黄合剤等の休眠期散布により媒介虫となるブドウハモグリダニの防除が重要です。
図.えそ果病の発生した葉および果実(ピオーネ)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

モモ開花予想

  • 今年の甲府における日平均気温の月平均は 1月:4.5℃(平年値 3.1℃)、2月:6.5℃(平年値4.7℃)と全般的に暖かい冬でした。
  • ただし、平均気温は期間ごとの寒暖の差が大きく、1月中旬には寒波が襲来し、乾燥状態が続きました。
  • 3月8日に発表された果樹試験場のモモ開花予想では、開花始めは、標高 440mの果樹試験場において3月29日で、昨年より6日遅く、平年に比べて4日早くなっています(表)。 3月上旬に曇雨天が続きましたが、今後は気温のやや高い日が続く予報が発表されています。気温変化により予想結果は変動します。休眠期防除等の作業が遅れない様に、最新情報の入手を願います。

vol.97
2024.3

モンシロチョウには見える(ざいけい)

  • 人間は肉眼でモンシロチョウ(以下、チョウ)のオスとメスを見分けるのは困難です。しかし、チョウは容易に見分けているのです(写真)。
  • 動物行動学者の小原嘉明先生によると、これはチョウの紫外線(可視光より波長の短い光)を感じる能力のためです。
  • チョウはメスのみ(はね)で紫外線を反射します。オスは畑の周辺をヒラヒラと飛びながら、葉にとまっているメスを一目で認識できるので即座に降下してメスと出会うことができるのです。
写真.アブラナの花の蜜を吸うモンシロチョウ

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.96
2024.2

年輪が語ること

  • 早生甲斐路の4樹を伐採したので、主幹部の年輪を生育記録と照らし合わせました(写真)。
  • 順調に生育してきたA樹の年輪は、きれいな円形でした。白い辺材は養水分の通路です。褐色の心材は、死んだ細胞で構成されています。
  • 成長過程で凍害を受けたB樹の主幹は亀裂が入り、正常に肥大しないで変形していました。
  • 樹齢37年生で順調に成長してきたC樹は、樹勢が健全に維持され主幹の直径34cmと大型化し、心材部分の面積が大きくなっていました。
  • 樹勢が低下しているD樹は、過去に太枝を剪定した部位から主幹下方に内部が腐朽して空洞化し、養水分の流動が妨げられていました。
写真 伐採樹の年輪(樹齢と直径長)

シャイン人気の将来

  • 本年1月1日の日本農業新聞に流通業者が注目する果実期待値ランキングが発表されました(表)。
  • 昨年まで13年連続1位のブドウ「シャインマスカット」は、6位とやや順位を下げました。
  • 本品種は、国内のブドウの概念を変えた革命的品種です。今では県内ブドウ栽培面積の大半を占める程に成長しました。
  • 一方、最近では未開花症や農家間の品質のばらつきなどの諸問題が報告されています。今が踏ん張りどころです。これまで以上に高品質果実安定栽培し、首位奪還を目指しましょう。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

山梨の「春一番」

  • 春一番は、立春から春分までの間に初めて吹く南よりの強い風(風速8m/s以上)とされ、地域ごとに発表されます。
  • この強風は、日本海の低気圧から延びる寒冷前線の通過に伴います。
  • 位置的な影響で、東京では通過前の南風が強くなるのですが、甲府では通過後の北風が強くなります(表)。
  • さらに周囲に山地をかかえ、風速が基準に届かない場合も多いのです。
  • その結果、春一番は関東地方では発表があっても通常、山梨では発表されない様です。
  • 2月に入って気温が上昇し、強めの風に出会ったら、「春一番」を歌いながらちょっと早い春の訪れを感じるのは自由です。

vol.95
2024.2

いろいろな花(ざいけい)

  • モモの花は、虫に花粉を運んでもらう虫媒花なのでピンクの花びらにより見た目が華やかです。また、同じ花の中心に雌しべ、周囲に雄しべを持つ両性花です。
  • マツの花は、風に花粉を運んでもらう風媒花であり、見た目が地味です。また、同じ樹上に雄花または雌花の単性花を別々に持つ雌雄同株の性質を持っています。
写真.モモとマツにおける花の違い

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.94
2024.1

SS洗浄物語

  • 1年間使い、ボルドー液等農薬で汚れたSS(スピードスプレーヤ) を昨年末に洗いました (写真)。
  • 最初に、リンゴ酸食酢等の希釈液をつけてこすってみましたが、洗浄程度は不十分でした。
  • 次に、やはり専用の薬剤が必要かと思い、市販品を吹き付きつけたところ、汚れ部分は気体を発生しながら落ちていきました。恐らく、汚れ成分の炭酸カルシウムに濃いめの酸が中和反応し、二酸化炭素を発生しながら分解したのでしょう。
  • したがって、ある程度濃い酸が必要なようです。家庭用洗浄剤の中には酸を含むものもあります。ただし、十分な水で流すとともにその後の酸による影響についてよく観察する必要があります。
写真 SS洗浄前後の状況

気候温暖化期における凍干害発生

  • 最低気温が低く、遭遇時間が長くなるとブドウ樹が枯れたり、発芽が遅れる等凍干害発生の危険性が高まります。
  • 近年では1980年頃、最低気温-10℃以下の低温時に凍干害が頻発しました。
  • 気候の温暖化傾向とともに年最低気温も上昇し、県下では過去30年間に目立った凍干害が発生していません(図)。
  • ただし、現在でも軟弱生育樹、高標高地園の樹等では凍干害発生の恐れがあるのでワラ巻き等の保温対策や乾燥防止のためのかん水を行ないましょう。
図 過去100年間の年最低気温の変遷(甲府)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

低温遭遇予測日の地図化

  • ハウス栽培果樹では樹体に一定時間以上の低温を当てた後、加温を開始します。
  • このため7.2℃以下の低温遭遇積算時間(以下、低温積算)を測定して加温の可否を判断しますが、現地栽培園では気象観測が不十分な場合が多く、簡単にはいきません。
  • そこで、果樹試験場では国関連機関の農研機構が持つメッシュ農業気象データを利用して日最高気温と日最低気温から低温積算を推定する方法を検討しました。
  • ●その結果、推定値と気象観測による実測値との間にはほとんど変わりなく、信頼性は検証されています。
  • ●県内現地園において低温が満たされる時期を予測し、その結果を地図上に表示できるメリットがあります(図)。
図.低温要求量600時間推定到達日
 (2021-2022年冬季、果試R4成果情報)

vol.93
2024.1

農薬の剤型(ざいけい)

  • 農薬は、取扱いやすさを高め、防除効果を十分に発揮するように、有効成分に様々な増量剤や補助剤を加えます。これを製剤と呼び、各種製剤の形態を剤型といいます(写真)。
写真.農薬における主な剤型
  • 主な剤型の特徴は以下のとおりです。
  1. 水和剤:水になじむ粉末状製剤で、水に懸濁けんだく(けんだく)(水に溶けない個体粒子が水に分散した状態)させて用いる最も一般的な製剤。
  2. 顆粒水溶剤:粉末を顆粒状に加工して、取り扱いやすさと安全性を向上したもの。
  3. フロアブル剤:分散剤等を加えて水で懸濁させヨーグルト状に加工した製剤。高倍率で希釈後使用するので果実が汚染し難く、薬害が少ない。
  4. 液剤:有機溶剤を加えた製剤であるため、果実表面の果粉が溶脱しやすく、果樹での使用は限られる。

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.92
2023.12

今年の冬は暖冬傾向(季節予報)

  • 気象庁より発表された季節予報によると、今冬は寒気の影響を受けにくく平均気温は「平年より高い」でしょう (表)。
  • 降水量は「平年並みか多い」見込みです。
  • 暖冬傾向ならば降雪の機会は少ないと予想されますが、どんな年でも一時的な寒気流入によりハラハラする時が数回あります。
  • また、2月以降は「南岸低気圧」通過による降雪の可能性が示されています。
  • 予報の影響は地域や栽培方式により異なります。最新の情報の入手を心掛けるとともに、剪定作業加温管理等の状況に応じた実施をお願い致します。

獣の冬の過ごし方

  • 夏の間、野山を走り回り、時には農作物に被害を与えていた野生獣も冬季は、食料が不足し、十分な栄養を摂取できなくなります(写真)。
  • そこで、シカイノシシサル等は残った木の実、落ち葉、ササの葉、木の芽や細い枝、それから木の幹の皮をかじりながら活動量を低下させて春を待ちます。
  • クマリスは、樹や岩に開いた穴等に入り、体温を落として冬眠に入ります。
  • アライグマは家屋に入り込むと破損や異臭の原因となるので早めの駆除が必要です。
写真 スモモ園で見かけたサル(R5.7 南アルプス市)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

低温要求量

  • 植物の年間のライフサイクルにおいて、生長活動が一時的に停止し、代謝が最低限に抑えられる状態を休眠と呼びます。
  • 落葉果樹の芽は夏季に形成された後、休眠に入り、越冬後、翌年春に休眠明けとともに発芽を迎えます。
  • 休眠がスッキリと明け、開花や発芽が揃うためには樹種や品種ごとに異なる一定時間の低温に遭う必要があります(図)。
  • これを低温要求量と呼び、7.2℃以下に遭遇した積算時間で表します。山梨県内ではブドウで約800~1200時間、モモでは約1000時間を目安としています。
  • 低温積算時間の現時点での状況は、果樹試験場のホームページで確認できます。
図.各種果樹の低温要求量(Westwood,1993)
樹種に表示されている範囲は、樹内の低温要求量の少ない品種と多い品種の差異を示す。

vol.91
2023.12

鳥のおしっこ

  • 動物の体内では、絶えず発生する有害物質のアンモニアを他の無害な物質に変えて体外に放出する仕組みがあります。
  • 哺乳類はアンモニアを尿素に変え、水分を加えて尿として単独に放出します。
  • ところが、鳥では空を飛んだり、雛が卵の中に閉じこもり発育するため、多量の水分を必要とするこの方式は不都合です。
  • そのため、鳥は尿素をさらに濃縮度が高い尿酸に変えてから、フンと一緒に放出します。これが白く見え、肥料の鶏ふんが窒素成分を多量に含む理由となります(写真)。
写真.駐車中の鳥フン被害

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.90
2023.11

欧州系品種と米国系品種の分化

  • ブドウの原産地は、なぜ欧州米国の二か所かと疑問に思っていました。
  • ブドウの先祖は1億年前(白亜紀)には北極海のまわりの温帯森林に広く分布していました(図)。
  • その後、大陸移動によって生息地の大半がユーラシア大陸、北アメリカ大陸に分断され、独自に進化しました。
  • 6,500万年前の第三紀に入ると地球全体が次第に寒くなり、ブドウの分布は南下しました。
  • 現在、アメリカ南部、ヨーロッパに生き残った系統が高品質なため栽培品種育種親として利用されています。
(九州大学総合研究博物館)

ゲノム編集

  • 作物の性質はゲノム(DNA上の遺伝情報)に含まれる遺伝子と深く関連します。
  • そこで、ゲノム上の遺伝子の特定箇所を一旦人為的に切り、細胞が元通り修復する過程で修復ミスが起こるのを利用して効率的に新品種育成を行なう画期的な新方法が考案されました(図)。
  • 機能性成分を多く含む野菜や花粉の少ないスギの育成等に用いられています。
  • 発明者のE.シャルパンティエ博士とJ.ダウドナ教授は2020年にノーベル化学賞を受賞しています。
図 ゲノム編集技術の原理(ゲノム編集~新しい育種技術、農研機構遺伝子組み換え研究推進室)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

木枯らし1号と落葉

  • 木枯らし1号とは、西高東低の冬型の気圧配置となり、その年初めて吹く北よりの(やや)強い風(季節風)です。
  • 東京地方と近畿地方でのみ気象庁が発表します。山梨版はありません。
  • 平均発生日は11月7日です。
  • 木枯らし1号が吹くと、落ちかかっているブドウやモモの葉が一掃され、本格的な冬へ歩みが早まるでしょう(写真)。
写真.落葉の進んだモモ園(11月7日、笛吹市)

追記:令和5年11月13日に気象庁は東京地方に木枯らし1号が3年ぶりに吹いたと発表しました。

vol.89
2023.11

秋に咲くサクラ

  • 笛吹市の八代ふるさと公園には約300本のサクラ樹が植えられています。
  • その中の一部の品種では現在、開花が見られます。
  • ジュウガツザクラは、10月下旬と3月中旬の年2回、八重咲のややピンクの花が開花します(写真)。
  • シキザクラは、10月中旬と3月下旬の年2回、一重咲きの白い花が開花します。
  • モモでは、冬に備えて葉中で植物ホルモンのアブシジン酸が作られ、休眠に入ります。ところが台風や害虫の影響で早期落葉すると、アブシジン酸が作られないので極まれに秋に開花する場合もあるようです。
  • 秋咲サクラは来春、秋以上に多くの花が開花します。
写真.ジュウガツザクラの開花
(八代ふるさと公園、11月7日)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.88
2023.10

ボルドー液を手作りしました

  • ICボルドーを購入し希釈すれば簡単にボルドー液が作成出来ますが、敢えて昔に戻り手作りしました。
  • 作成手順は、生石灰に少量の温湯を注ぎ、十分に溶かしたら全量の1~2割の水を加えて石灰乳とします。これに別途溶かした硫酸銅液を攪拌しながら加え、全量を設定液量に合わせて完成です。
  • SS散布用に一度に400Lを作りました。硫酸銅や生石灰を溶かす際には、電動ドリルの先端に塗装材用の撹拌機を付けて使い、作業を効率化しました(写真)。
  • 病害予防効果は同様でしたが、経費はICボルドーで数千円かかっていたところ、約半額で済みました。
  • 準備時間は、ICボルドーでは10分でしたが、手作りでは30分程度必要でした。栽培面積や作業環境を考慮しながら有効利用するのが望ましいでしょう。
写真.ドリル先端に撹拌機を付けて
硫酸銅を溶かす

貴腐ワインは限られた環境で生まれる

  • 一度は聞いたことがあっても貴腐ワインを実際に召し上がった方は少ないと思います(写真1)。
  • 原料の貴腐ブドウは灰かび病菌が特定品種の果粒表面に付着し、内部の水分を奪うことにより生産されます(写真2)。
  • フランス等の限られた一部地域でしか、この生産環境は揃いません。
  • 収量は減りますが極甘口でエキス分が凝縮された黄金色のワインが造られます。
  • 比較的高価なものが多くなりますが、専門店や通販で購入可能です。
写真1.貴腐ワインのボトル
写真2.貴腐ブドウ

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

やっかいなツル性雑草3選

写真.代表的なツル性雑草(左からアレチウリ、クズ、ヤブガラシ)

  • ツル性雑草は他の植物に巻き付きながら成長します。
  • エネルギーは身を支えることに使う必要がないため、伸長に集中します。
  • 生育は早く、気付くのが遅れるとモモ樹全体が覆われてしまいます(写真)。
  • アレチウリ:カボチャ同様に這い回り、巻ひげで樹に絡みつき、よじ登ります。
  • クズ:巨大化して辺り一面を覆い尽します。ヤギはこの葉が大好きです。
  • ヤブガラシ:地上部を抜いても、地下茎が残ればすぐに復活するしぶとい雑草です。
  • いずれも、大きくならないうちにこまめに根ごと抜いてしまうのが鉄則です。

vol.87
2023.10

ボルドー液は、どのように効く?

  • 1885年にフランスのボルドー大学のミラード教授により硫酸銅生石灰の混合液(ボルドー液)がブドウの殺菌剤として発表されました。
  • 日本では1926年以降、ブドウに限らず多くの作物で使われてきました。
  • ボルドー液に含まれる成分が病原菌の体内で機能する酵素の働きを抑えることにより、多くの病害の発生を予防します。
  • モモでは、せん孔細菌病対策として、9月中旬~10月上中旬の間に2週間間隔で2~3回、また、3月中旬(花弁が見え始める時)に、いずれもICボルドー412 30倍または4-12式ボルドー液を散布します(写真)。
写真.モモへのボルドー液散布

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.86
2023.9

黒とう病の伝染源の除去を!

  • 今年6月上中旬に降水量が多かったため、主力品種のシャインマスカットを中心に黒とう病の発生が見られています(写真1)。
  • 来春の萌芽までの管理作業で重要なことは、病原菌の越冬量を少なくして、来シーズンを健全な状態で迎えられるような環境整備です。
  • そのためには、今のうちから、巻ひげ発生の見られる新梢を除去する耕種的防除を実施しましょう (写真2)。
写真1.黒とう病の感染果房・新梢
写真2.秋季における巻ひげの管理

残された足跡から獣の種類を推定

図. 果樹園で被害が認められる獣の足跡
(改訂版 野生鳥獣被害防止マニュアル
  • 目撃する機会の少ない獣は足跡も参考にして獣種を推定後、対策を実施します(図)。
  • 偶蹄類のイノシシシカは2本のヒヅメの跡を残します。
  • 肉球を持つイヌ、ネコは4本指の足跡ですが、他の多くの獣は5本指の足跡を残します。サルの親指は短く外側を向きます。
  • サル、アライグマ長い指の足跡を残します。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

暑い今夏ではあったが...

  • 今夏の甲府における月平均気温は6月22.8℃(平年比+0.5℃)、7月27.8℃(平年比+1.8℃)、8月28.2℃(平年比+1.1℃)であり、暑い夏でした(図)。
  • 猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)の日数は9月上旬現在、32日と平年の約2倍でした。まさに気象庁が示した「顕著な高温」という状態で経過しました。
  • 降水量は、台風2号の通過もあり、6月が256.0mmと平年比225%と極端に多く、硬核期~収穫期を迎えた早生品種を中心に核割れ着色不良等の被害が現れました。
  • これらの大雨は、温暖化に伴う水蒸気量の増加傾向の影響が考えられます。
  • 今までは、温暖化は日照量が増加するのでモモ栽培に対してプラス面も大きいのではではないかと思う面がありました。
  • しかし、降雨の極端化傾向も明らかになり、マイナス面も明らかです。
  • 果実生産や労働環境等広範囲への温暖化への対応策が求められています。

vol.85
2023.9

秋季の管理もシッカリと!

  • 収穫作業が終了しホッとひと安心する時期ですが、9月は冬に備えて貯蔵養分を蓄え、来シーズンに備える重要な期間ですので必要な管理作業を適宜行いましょう。
  • 樹に絡みついているツル性雑草は除去し、受光体制を確保しましょう(写真右)。
  • 折れた枝等は補修や剪除し傷口には癒合剤を塗りましょう(写真中央)。
  • 支柱を結びつけていたマイカ線や針金は枝の肥大に伴い、食い込んで行くので緩めましょう(写真左)。
写真.秋季に必要なモモ園管理作業

vol.85 ダウンロード

NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.84
2023.8

コガネムシ類の防除

  • 近年、7月以降のブドウ葉にコガネムシ類(ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネ等)の発生が見られます。
  • マメコガネは体長1cm程度の小型甲虫です(写真)。特に頻繁に認められます。
  • 新梢先端の柔らかな葉を中心に、ボルドー液がかかった状態であっても葉脈を残すように網目状に食害します。
  • 殺虫剤のアディオンフロアブル1,500倍、ダントツ水溶剤4,000倍、エクシレルSE 5,000倍等の散布が有効ですので指導機関と相談して用いて下さい。
  • 散布しても残効が切れると再発生するので十分に観察しながら対応して下さい。
写真.ブドウ葉を食害するマメコガネ (品種:甲州)

晩腐病によく似た苦腐病

  • 現地調査において、園によっては苦腐病(にがぐされびょう)の発生果を見かけることがあります(写真)。
  • 外観は晩腐病によく似ていますが、胞子の塊りが晩腐病のオレンジ色に対して苦腐病では黒色です。
  • 防除対策は晩腐病同様に休眠期からの殺菌剤散布、早期袋・カサかけ、被害果の整理が中心となります。
写真.現地調査で観察された果実腐敗病
(品種:ピオーネ、晩腐病)
写真.現地調査で観察された果実腐敗病
(品種:ピオーネ、苦腐病)

vol.84ダウンロード

NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

モモの硬さと輸送性

  • モモは早採りを避け、樹上で完熟した果実を収穫すると大玉で糖度が高く、風味も向上します。
  • しかし、同時に果実の軟化が進むので、打撲等をうけると、果肉は容易に褐変化し、流通過程におけるロス果の増加につながります(写真)。
  • したがって、果実硬度が2.0~2.5kg程度に入る適熟果を選別して収穫・出荷することが作業上のポイントとなります。
  • 果実は室温では収穫後の時間経過とともに軟化が進みます。
  • 流通過程や購入後においても果実を低温(5℃程度)に保つと新鮮な状態のまま長く保てます(図)。
写真.打撲24時間後に発生した果肉褐変
図.低温貯蔵効果(白鳳、果試)

vol.83
2023.8

真夏の雑草:オヒシバとスベリヒユ

  • 8月に入り、果樹園の地表面は生育旺盛な雑草に覆われます。今回は真夏を代表する2種類の雑草を紹介します。身近な道端にも見られるので、視線を落としてみて下さい。
  • オヒシバ:代表的イネ科雑草です(写真)。葉や茎が太く、根は深く、ガッチリとしており引き抜くのに苦労します。
  • スベリヒユ:マツバボタンによく似た外観をした多肉植物の一種です。サボテンと同様に乾燥に適応出来る生理機構を備えています。
  • 両雑草に共通な特徴は、強日照、高温、乾燥に強く、畑でも荒地でも、旺盛な生育を示す点です。まさに、真夏の気候条件に最適の植物であると言えます。
写真.果樹園で見られるオヒシバ(中央)とスベリヒユ(下)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.82
2023.7

梅雨明け後の気象予報

  • 県内における今年の梅雨期は、6月中は雨天が続きましたが、7月に入り、少雨の傾向にあります。
  • 6月に発表された3か月予報によると今後は平年より高温で降水量もやや多いとされています(図)。
  • 温暖化による猛暑の傾向には変わりません。かん水の実施や果実の日焼け対策を丁寧に行いましょう。
  • 降水量も多いと予想されているので、夕立や台風の襲来も考えられます。
  • 排水対策や暴風雨対策等の出来ることは早めに行っておきましょう。
図.気温、降水量の各階級の確率(%)  
(関東甲信地方、気象庁6月20日発表)

殺ダニ剤の適期散布を

  • 高温乾燥条件ではハダニの発生が懸念されます。
  • 葉裏の被害部は、滲んだように褐色化します(図)。
  • 果粒表面は、吸汁によりかすり状の褐色斑点が生じます(図)。
  • ハダニの発生が見られる場合は、指導機関と相談しながら、適切な殺ダニ剤を選択し、早期防除をお願いします。
図.ハダニによる葉への被害状況
(シャインマスカット、果樹病害虫サポートシステム)
図.ハダニによる果粒への被害状況
(シャインマスカット、果樹病害虫サポートシステム)

vol.82ダウンロード

NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

毛茸は何のためにある?

  • モモ果実の表面は毛茸(もうじ)と呼ばれる細かい産毛により覆われています(写真)。
  • 一般に生育初期に毛茸は多く、生育とともに減少しますが、モモは収穫果実にも残ります。
  • 毛茸の役割は葉や果実を病害虫から守ることと言われています。
  • 実際に毛茸がある状態の果実と除いた状態の果実で表面に付く水分量を比較しました。
  • その結果、確かに毛茸があると果実表面に付着する水分量は減ります。病気にかかる機会を低下させているかもしれません。
写真.モモ果実表面に分布する毛茸(浅間白桃、15倍)

vol.81
2023.7

台風のアジア名

  • 例年、年間で平均25.1個の台風が主に東アジア地域内で発生します。
  • これらの地域の文化尊重、連帯強化、防災意識の向上のため、2000年より日本を含む14ヵ国による台風委員会により発生する台風に共通のアジア名がつけられています(表)。
  • 共通名は、各国が提案した合計140個の名前を順番に回して呼ぶ方式です。
  • 日本国内では、台風は番号名で呼ぶのが一般ですが、ニュース等でアジア名を併記されることが多くなっています。

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.80
2023.6

キュウリのうどんこ病はうつる?

  • ブドウの棚下でキュウリを自家用栽培している農家がおられます。ところでキュウリにうどんこ病が発生した場合、ブドウにうつる可能性はあるのでしょうか?
  • その可能性は低いというのが正解です。
  • 名前は同じでもブドウのうどんこ病とキュウリのうどんこ病は違う菌です。
  • キュウリのうどんこ病はウリ科作物にしかうつりません。病原菌は罹病する相手が限られます。これを宿主特異性といいます。
  • ただし、灰色かび病菌等の一部の菌は広く多くの植物にうつるものもあるので注意が必要です。
写真.ブドウのうどんこ病㊤とキュウリのうどんこ病㊦
(果樹、野菜病害虫診断サポートシステム)

IBR剤という殺虫剤

  • IBR剤(Insect Behavior Regulator、昆虫行動制御剤)は、昆虫の感覚神経に働きかける新しいタイプの殺虫剤です。
  • 昆虫は、関節や羽が伸び切り、吸汁活動や歩行・飛翔活動が妨げられます(図)。その結果、作物から落下し、餓死します。
  • 神経系に激しく作用するのでなく、行動を抑制して制御する環境に優しい農薬です。
  • 今年の防除暦では、ブドウの開花期付近でカイガラムシ、チャノキイロアザミウマ防除に用いられるコルト顆粒水和剤がIBR剤の一つとして活用されています。
図.コルト顆粒水和剤の殺虫効果(コルト普及会)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

草刈り回数の多い草生栽培園

  • 草生栽培における草刈り作業の頻度は各農家によりマチマチです。
  • 今回、取り上げる2園は道路を隔てた近隣のモモ園です。
  • 上の園では1週間置きの頻度で草刈りを行っています。イネ科雑草が主体で生育しています。
  • 一方、下の園は草刈りを3~4週間置きの頻度で行っています。様々な種類の広葉雑草、イネ科雑草が生育しています。
  • 草の地上部が切り取られると、成長点が先端にある広葉雑草は生長出来ません。イネ科雑草では成長点が地際にあるのでその後も成長を続け、生き残ります。その結果、草種がイネ科に偏ります。
草刈り回数が多い園
草刈り回数が標準的な園

vol.79
2023.6

写真.草刈り頻度による雑草種類への影響(6月1日)

暑さ指数(WBGT)

  • 農作業時に熱中症を予防するためには、以下が重要ポイントです。
  • ポイント1:体調、気象情報に気を配り、高温対策を行なう。
  • ポイント2:小まめに水分摂取や休息しながら無理をせずに作業を行う。
  • 身体への負担は温度だけでは決まりません。暑さ指数(WBGT)の目安値を超えない様に作業を調整して下さい。
  • 各地域の暑さ指数環境省HPにおいて翌々日分まで予報され ているので参照して下さい。
表.暑さ指数と農作業の目安(農水省)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.78
2023.5

薬剤散布は降雨の前か?後か?

  • GW終盤から天気が不安定となり、薬剤散布のタイミングに苦慮しています。
  • シャインマスカットを栽培する某農家の事例です。5月7日段階で、生育が早い栽培樹で展葉9枚、遅い樹で7枚ぐらいです。
  • 5月4日にべと病・黒とう病防除用にオーソサイド水和剤80 800倍を散布しました。次回は10日後の14日を予定していました。
  • 週間天気予報によると13日以降雨天が続きます。降雨により雨媒伝染性であるべと病・黒とう病の感染の可能性が高まります。
  • 次回散布は、天候が回復する17日を待たずに降雨前の11、12日に早めに実施し、感染予防に徹するのが適正と考えられます。
図.週間天気予報(5月7日時点)

ロウ引きカサ紙の表裏

  • 長年、ロウ引きカサ紙をブドウにかける際には、ロウ引き面は上に向けるものと思っていました。その理由は、雨を良くはじくためだからです。
  • しかし、ブドウ栽培の関連サイトでは、ロウ引き面を下に向ける方式も多く見受けられます。
  • そこで、かける面をどちらかの方向に変えて影響をみました。その結果、確かにロウ引き面を上に向けるとざらざらした面が下にくるので、果粒表面にこすれ傷の発生が認められました(写真)。
  • 特に、幼果時に風が強い園のシャインマスカットでは目立ちましたが、黒系ブドウや摘粒時に落としてしまえば気にならない様に感じられました。
写真.果粒表面で見られたこすれ傷(シャインM)

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

斑葉モザイク病

  • モモの生育初期に見られる気になる症状について紹介します。
  • 展葉直後の葉に黄色の斑模様が見られることがあります(写真)。
  • この症状は葉のみに発症し、奇形や表面がひきつれた症状が出る場合もあります。
  • 黄色の斑は、気温の低い時には鮮明ですが、6月以降になり気温が上昇すると消滅します。
  • 本病はウイルス病の一種と考えられています。ただし、症状の有無と収量や品質との関連は明らかでなく、症状が見られても 実用上の影響はありません
写真.モモの葉に見られるモザイク症状(令和5年5月2日)

vol.77
2023.5

畑でカミナリに遭ったら

  • 気温の上昇とともにカミナリの発生頻度が高まる季節となりました(写真)。
  • カミナリへの対応は、まずは普段から気象情報に注意し、急な発生に備えることです。
  • 雷雲が10km以内に近づくと最初の雷鳴が聞こえ始めます。移動速度は30km/時程度なので20分後に雷雨に遭うと予想されます。
  • これはかなりの高速度なので自宅や作業小屋などに早めに移動するのが望ましいと思います。
  • 雷雨が降りだしても自動車や家屋内に退避すれば落雷の危険性はありません。屋外で待機しなければならない場合は、樹から離れ、身を低くして嵐が通り過ぎるまで20~30分間待機するしかありません。
写真.激しい雷雨とともに発生する稲妻

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.76
2023.4

ポジティブリスト制度を説明できますか?

  • 栽培農産物に農薬を散布すると農薬成分が残留するので成分ごとに基準値を設定し、超過するものは流通しないように規制します。
  • 以前のネガティブリスト制度では国内で使用が認められた農薬(表中成分A、B)のみ基準値を設定し流通の可否を判断していました。
  • しかし、世界中から食品が輸入される現在では、国内では認められていない農薬(成分C)が海外で使われ、輸入されても基準値がないので流通規制は不十分となってしまいます。
  • 新しいポジティブリスト制度では、使用が認められた農薬は従来の基準値を用い、それ以外の全農薬は一律基準(0.01ppm)という厳しい基準値を適用し、安全性を確保しています。

3種類のタンポポ

  • 春の果樹園では様々な花が開きます。その中でも目を引く花はタンポポです(写真)。
  • タンポポには多くの種類がありますが、県内で最も多いのは黄色の花びらでガクがギザギザで反り返っているセイヨウタンポポ(外来種)です。
  • 次に多いのは、黄色でガクのギザギザが少なく、丸いものはニホンタンポポ(在来種)です。
  • この他に、花びらが白いシロバナタンポポ(在来種)も時々見かけます。
  • ニホンタンポポは有性生殖しますが、他の2種は受精せずに増殖する無性生殖です。特にセイヨウタンポポは繁殖力が強く、分布が拡大しています。
写真. 果樹園で見かける3種類のタンポポ

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

現状における生育状況(4月1日現在)

  • 今冬の気温は平年並み~やや暖かい傾向でした。
  • その後、3月に入ると甲府における日平均気温の平均値は11.9℃(平年値8.6℃)と高く、著しく気温が上昇しました(図)。
  • 甲府のサクラ開花始めは3月17日(前年比4日早い、平年比8日早い)でした。
  • 峡東地区の平坦地でのモモ開花始めは25日頃で、現在は満開を過ぎたところです。
図. 本年1~3月の日平均気温(甲府気象台)

vol.75
2023.4

  • 当組合の現地モデル調査結果によると、スモモ、モモ等立木類の生育は昨年に比べて7~8日早く、平年に比べて9~10日早い傾向です。春季は気象変動が大きいため霜害等の可能性があるので天気予報に留意しながら適期管理に努めましょう。

農薬散布後は機具を3回洗いましょう

  • 開花とともに新梢が伸長し、農薬散布による定期防除を行う時期となりました。
  • 使用した農薬が機具に残り、次の散布液に混ざると、農薬残留防除効果低下の原因となります。
  • 適切な洗浄回数を知るために3種類の農薬成分を含む薬液を散布後、ホースに6回水を通し、各洗浄液中の成分濃度を測定しました。
  • その結果、3回洗浄すると薬液中の農薬成分濃度は十分に低下し、残っていた成分の99%以上が除去されました(図)。使用した散布機具は十分に洗浄する必要があります。
写真.農薬散布機具の複数回洗浄による成分除去効果 (天野他(2021)より作成)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.74
2023.3

農薬の毒性区分

  • 農薬は医療用外の化学物質として毒性に応じて「毒物」と「劇物」に区分され取扱いが規制されています。
  • 毒物・劇物の判定は、動物試験の急性毒性値(LD50LC50)を目安にして行われます(表)。
  • ただし、これらに該当する農薬であっても、指定された基準通りに用いれば、使用者や農作物に悪影響が及ぶ事はありません
  • 現在、県内で流通する農薬は700~800種類に及びます。その内、毒物は1%以下劇物は12~14%程度で、大部分は毒性の低い「普通物」に区分される農薬です。
    • LD50:半数致死量といい、試験に使われた一定数の動物の50%を死亡させる薬物の量を、その動物の体重1kg 当たりの薬物量(mg)により表します。
    • LC50:半数致死濃度といい、実験動物に4時間吸入させ、50%を死亡させる薬物の濃度を示します。

「ニッチ」の意味

  • 壁面に窪みを作り、収納や展示等のインテリア用途として活用するスペースを建築用語で「ニッチ」と呼びます(図)。
  • 転じて、生物学の分野では、食物や天敵等を含む各生物の生活様式(生態的地位)を示し、各生物のニッチが重複しないことが生物の共存条件として必要とされます。
  • さらに最近では、経済学分野で隙間の意味も追加され、従来の企業が手を付けなかった分野をニッチ産業などと呼んでいます。
  • シャインマスカットは隙間品種に留まらず、王道を行く新たなニッチを築いた例だと思います。
図.壁面のインテリアスペース「ニッチ」

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

今年のモモの開花はいつ?

  • 今年の甲府における日平均気温の月平均値は1月:3.3℃(平年値3.1℃)、2月:5.7℃(平年値4.7℃)と平年並み~やや暖かい冬でした。
  • ただし平均気温は期間ごとの寒暖の差が大きく、特に1月下旬には寒波が襲来し、最低気温は -8℃以下まで低下しました。
  • 3月6日に発表された果樹試験場のモモ開花予想では、今年の開花始めは、標高440mの果樹試験場において4月1日で、昨年より1日遅く平年に比べて1日早くなっています(表)。

vol.73
2023.3

  • なお、3月は気温の高い日が続く予報が発表されています。気温変化により予想結果は変動します。休眠期防除等の作業が遅れない様に、最新情報の入手を願います。

人口授粉する花としない花

  • スモモ、モモ、オウトウ等は毛バタキやミスト機を使って人工授粉をします(写真)。
  • スモモやオウトウで人工授粉が必要な理由は、自家不和合性という、同じ品種の花粉(自分の花粉)がめしべに付いても受精に至らない特性によります。
  • 一方、モモは自家和合性で同じ品種(自分の花粉)でも受精出来ます。
  • しかし、浅間白桃等の品種では花粉自体がない~少ないので、これらの樹が実をつけるためには、花粉を持つ品種から花粉を採取し、人工授粉する必要があるのです。
写真.ミスト機によるモモの人工授粉作業
(志田農園HPより https://eat-a-peach.jp/kouza_zyuhun1.htm)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.72
2023.2

シャインマスカット首位堅持

  • 本年1月6日の日本農業新聞に流通業者が注目する果実ランキングが発表されました(表)。
  • 1位は13年連続でブドウ「シャインマスカット」であり、不動の首位を堅持しました。
  • 2位は愛媛県産カンキツ「紅まどんな」、3位は小玉スイカ「ピノ・ガール」と続きます。スモモ「貴陽」は17位と健闘しました。今後は他の県産ブランド品種にも期待します。
  • 人気品種の条件は、まず美味しいことですが、その他に、種なしや皮があってもそのまま食べられる等の手軽な特性も重要です。
  • さらに、円安傾向が続く状況では、輸出も重要な流通先です。東南アジアでは栽培されないリンゴやサクランボ品種が多くランクインしているのが注目されます。

南岸低気圧は降雪の可能性

  • 日本海沿岸地域と違って、山梨では真冬に大雪は降りません。大雪の可能性が高まるのは寒さの緩む2~3月です。
  • 日本列島の南岸を東に進む低気圧による影響です。八丈島付近を通る時が雪の可能性が高く、北側を通ると雨、南側を通ると曇りにかわると言われます(図)。
  • 過去に2014年2月14、15日の様な大災害に至った事例が数多くありました。
  • この低気圧の特徴は影響要因が多く、正確な予報が困難な点です。最新情報を入手し、指導機関の指示に従いましょう。
出典:https://tenki.jp/suppl/tenkijp_labo/2022/02/06/30886.html

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

南京結びは必須の技術です

  • 南京結び(万力結び)は荷物を軽トラック等の荷台にしっかりと固定する結び方です。運送屋さんがよくやっているあの方法です。
  • 剪定枝や各種資材、収穫果実を運ぶのに使います。まだ、御存じない方は便利で簡単なので、この機会に覚えると良いと思います。
  • 方法は、ロープの中間を8の字に曲げた輪の中にロープの端側を通し、引いた後に車のフックに引っ掛けます(写真)。
  • この文章だけではまず分かり難いと思うので、以下の動画等を参考にして下さい。https://www.youtube.com/watch?v=hF34sik8RP0
  • 非常に強力にロープが締まる方法ですが、荷物の種類や運送距離に応じて締める強度の調整輸送途中における確認が必要です。
写真.南京結びにより荷物軽トラの
荷台に固定する

vol.71
2023.2

防除日誌をつけましょう

  • 今年の防除が本格開始する前に、防除日誌をつける目的と内容を再確認しましょう。
  • 記帳の主な目的は、1:消費者に対し食品としての安全性を証明する資料とする、2:防除作業を振り返りながら技術の更なる向上を図る等です。
  • 防除日誌には圃場ごとに対象作物名、散布した月日、農薬名・希釈倍率、散布量、防護服や器具洗浄状況等について実態に合わせて記録します(写真)。
  • すでに、県下のJA、個人出荷、観光園等では防除日誌記帳について義務化または指導され、安全で安心、適切な農作物の栽培・販売が推進されています。
写真.防除日誌例

vol.71 ダウンロード

NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.70
2023.1

雪になるか、雨になるか

  • 雪はブドウ栽培の脅威です。これまでに大雪に見舞われる度にブドウ棚が倒壊し、栽培面積が大きく減少しました。
  • 最近はせん定を早めに終わらせて棚への負担を軽減させる農家が増えました。
  • この他、予め天気予報に気を配り、支柱立て等の事前対策が重要です。
  • 甲府では日平均気温が3~4℃以下の日で雪またはみぞれが認められます(図)。
  • 日平均気温は1日が終わる頃でないと正確には分かりません。さらに日最高気温7~8℃以下の基準を加えると、雪またはみぞれの予測確率が高まり、一応の目安になります。
図.日平均気温、日最高気温と降雪の関係(甲府)
2012~2021年の1,2月の降水日を解析した結果

RNA農薬の開発

  • 生物の細胞内では遺伝子を構成しているDNAが一旦mRNAに書き写され、タンパク質が作られ、生命が維持されます。
  • この時に相応なsiRNAを加えるとmRNAが分解等を起こし、タンパク質を作れなくなるRNA干渉が発生します(図)。
  • この現象を基に主にウィルスやがん等の医療面への応用研究が進んでいます。
  • 農薬分野では、遺伝子レベルで特定の害虫だけに作用して死に至らせます。環境への影響が少ない殺虫剤の開発につながると言われ、開発が期待されます。
図.mRNA干渉によるタンパク質生成阻害の主な概要

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

枯死症対策4:モモ胴枯病の発生を抑える管理技術

  • 最終回になりますが、果樹試験場が発表した「モモ枯死症の発生抑制に向けて(第4報)」を紹介します。
  • 胴枯病は枯死症の一因となるので、防態や病徴を知るとともに適切な防除対策の実施が必要です。
  • 感染部の樹皮はややくぼみ、表皮下は褐変化し、細かい粒(子座)が現れます(図1)。降雨が続いたり湿度が高まると、子座内の黒い柄子殻の先端から、赤褐色で糸状の胞子角(胞子の塊)が放出され、雨水により飛散します。
  • 胴枯病菌は樹体の傷口などから侵入するため、侵入門戸となる剪定切り口や傷口は早く治し、樹体に傷をつくらないことが重要です。
  • 胴枯病の発生初期ならば、春先~初夏に病班を丁寧に削り取り、傷口と周辺の健全部に、トップジンMペーストを広く十分塗布し、ゆ合を促進することで、枯死を防ぐことができます(図2)。
図1 褐変化した主幹部と子座
図2 病斑部の削り取りと癒合状況

vol.69
2023.1

放射冷却と逆転層

  • 地上のあらゆる物が赤外線とともに熱を発し冷えていく現象を放射冷却と言います。
  • 曇雨天では、空に浮かぶ雲が地上を布団の様に包み、熱の発散を防ぎます。
  • 反対に、晴れて雲のない天候では、地上の熱は上空に逃げてしまい、空気が攪拌されず地表面の冷え込みは厳しくなります。
  • 地表面よりも上空の気温が低い逆転層が発生します。
  • 良く晴れた寒い冬の朝に剪定枝の焼却煙が上昇せずに滞留するのはこのためです。
写真 低地に滞留する剪定枝の焼却煙

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.68
2022.12

活性酸素3:フレンチパラドックス

  • フランス人は乳脂肪や、肉類などの動物性脂肪の摂取量が多いにもかかわらず、心臓病の死亡率が低いことを「フレンチパラドックス(逆説)」と呼びます(図)。
  • 原因は、フランス人が日常的に飲んでいる赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用によるとされました。
  • 1990年代に発表された本説が折からの健康志向ブームに乗り、ワイン出荷量が急増する原動力となりました。
  • その後、さらに研究と議論は進んでいます。飲みすぎは肝臓病などの病気を引き起こす要因にもなるので適量の範囲内で楽しむ原則は変わらないようです。
図.ヨーロッパ諸国と日本における乳脂肪摂取量と心臓病死亡者数の関係(S.Renaud.,Lancet:339,1992.)

今冬の気象予報

  • 11月22日に気象庁より発表された3カ月予報によると今年の冬の気温は、寒気の影響を受けやすいため、平年並か低いでしょう(表)。
  • 降水量は、冬型の気圧配置が強く、低気圧や前線の影響を受けにくいため、平年並か少ないでしょう。
  • ラニーニャ現象が継続して観測されている影響もあり、2年連続のやや寒い冬になりそうです。本格的な冬を迎える前に、畑かんの凍結防止・樹体の防寒対策等の実施をお願いします。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

枯死症対策3:モモのゆ合を促す剪定方法

  • 引き続き、果樹試験場が発表した「モモ枯死症の発生抑制に向けて(第3報)」を紹介します。
  • 剪定時に枝の基部を残す、いわゆる「切り残し」を行なうと、切り口はゆ合しないで枯れ込みや胴枯病の感染が多くなり、枯死の原因となると考えられます。
  • したがって、枝の基部を残さずに「すり切り」で切り、ゆ合剤を塗布すると、切り口はゆ合して、枯れ込みや胴枯病感染のリスクは低減します(写真)。
  • 切り口のゆ合を促し、枯れ込みや胴枯病感染リスクを低減するには、次のことを励行して下さい。
  1. 若木の剪定は、厳冬期を避け、3月上旬に実施する。
  2. 剪定時の切り口は枝梢の基部を残さない「すり切り」とする。
  3. 主幹や主枝、太枝の切り口には、必ずトップジンMペースト等のゆ合剤を塗布する。
図 「すり切り」剪定によるゆ合効果

vol.67
2022.12

リンゴ人気品種「ぐんま名月」を食べてみた

  • モモに限らず、最近、人気の高い果物品種のトレンドを知るためにリンゴの「ぐんま名月」を職員17名で試食しました。(育成地の群馬県以外で栽培されたものの多くは「名月」と呼ばれています。今回は県内産のために通例に従います)
  • 着色は陽光面がほんのりと染まる程度で、満月というより三日月~半月の雰囲気です(写真)。
  • 食味の特徴は、「ふじ」に較べて酸度が低く糖度が引き立って高く感じられました(表)。
  • 総合評価は両品種に大差がありませんでした。
  • 結局、どちらの品種を選ぶかは酸味の多少に対する試食者の好みで決まった様でした。既存概念と異なる品種が多様な消費者嗜好に彩りを加えます。
写真 試食リンゴ 左:ふじ、右:名月

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.66
2022.11

活性酸素2:抗酸化物質

  • 生物は酸素の取り込みに伴い発生する有害な活性酸素を除去する何種類もの抗酸化物質を同時に発達させてきました。 *Super Oxide Dismutase(活性酸素除去酵素の一つ)
  • それらの物質の一つであるSODの活性は霊長類とネズミにおいて最長年齢強い関係が認められました(図)。つまり、活性酸素を低い状態に維持すれば、病気に罹らず老化が抑えられ長生きが出来る可能性があります。SOD維持のためには体調管理や禁煙等が必要です。
  • この他、抗酸化物質には食物として摂取するもの、ビタミンC、茶のカテキン、緑黄色野菜のβ-カロチンなどが数多くあります。また、赤ワインに含まれるポリフェノールも注目されています。(つづく)
図.霊長類とネズミにおける最長寿命とSOD活性/比代謝率との関係(Tolmasoff,J.M.)

RAC(ラック)コードの有効利用

  • 農薬が病害虫に効くメカニズム(作用機構)は農薬に含まれる有効成分ごとに違います。
  • 農薬を作用機構ごとにグループ分けしたものを系統と呼びます。
  • 同じ系統の農薬を連用すると抵抗性が発達し、効かなくなってしまいます。そこで違う系統の農薬を交互にローテーション散布する必要があるわけです。
  • 農薬メーカーは、全ての農薬を系統別に分類し、番号とサブグループを示す記号を振り3種類のRACコードを設定して分かりやすくしています。
  • 殺虫剤ではIRACコードが使われます。例えば、主なダニ剤は表のように分類され、違う番号コードの農薬を選択すればダニの抵抗性発達を防止できるようになります。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

枯死症対策2:土壌病害の見分け方

  • モモ樹が枯れる原因は枯死症の他に土壌病害等がありますがしばしば混同されているようです。今回はこれらの見分け方について取りまとめて紹介します。

vol.65
2022.11

燃料としてのアンモニア

  • 窒素肥料として使われるアンモニアは二酸化炭素を発生しない新エネルギー源として期待されています。虫刺され薬の「キンカン」に入っているあの臭い物質です。
  • 本来、アンモニアの燃焼は弱く、不安定なものでしたが、条件を適切に設定すると十分に燃焼してエネルギーを発します。
  • 当面は天然ガスや石炭に混ぜて使われますが、将来はアンモニアだけで燃焼させて実用化されると期待されています。
  • 同時にアンモニア生産量が増大すれば、コスト低減により農業面のメリットも高まります。
図 タービン内で旋回燃焼した際の火炎
(国立研究法人 科学技術振興機構)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.64
2022.10

活性酸素1:その益と害

  • 生物は生きるために空気中の酸素を体内に取り込み利用しています。
  • 哺乳類ではそれら酸素の数%が体内で反応性の高い活性酸素に変化します。
  • 活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷害し、がん、心血管疾患ならびに生活習慣病など様々な疾患をもたらす要因となります。
  • 実際に近縁の哺乳類では心拍数が高く、体重あたりの酸素取り込み量の多い動物ほど平均寿命が短く、老化が早い傾向にあります(図)。
  • 次回からは、活性酸素に対し防御作用のある抗酸化物質と果樹との関わりについて紹介します。

「甲州」を栽培しましょう

  • 日本を代表する醸造用ブドウ品種である「甲州」の栽培が平成初期の半分に低下しています。
  • この背景には、栽培者の高齢化、価格低迷、天候不順、生食用優良品種の台頭などがあります。
  • 将来に向い「甲州」を守っていくことは、ワイン産業にも栽培農家にも重要です。
「甲州」の栽培面積と生産量の変遷
(山梨ワイン産地確立推進計画より)
  • 優良系統選抜や生産安定のための技術開発制度整備が進んでいます。栽培農家は本品種を今後の栽培計画に取り入れてはいかがでしょうか?

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

枯死症対策1:発生樹の特徴

  • 県下モモ園において発生する枯死症の特徴や対策について主に果樹試験場の研究資料を用いて、数回にわたり連載します。冬~春季管理の参考にして下さい。
  • モモの枯死症は、以下の症状を示します。

 ・樹齢6年生までの若木に発生が多い。

 ・春先に発芽はするが、新梢が伸長せずに枯れる(写真)。

 ・台木は健全でヒコバエの発生がみられる。

写真.枯死症の発生樹
(日川白鳳、4月25日)
  • 発生樹の主な特徴(以下の症状が複数見られる園が多い)

 ・冬季剪定時の強剪定により、主幹部や主枝に太枝を切除した切り口が多数あり、その切り口から主幹部に枯れ込み

  が入っている。

 ・剪定した枝の基部が切り残され(通称:でべそ切り)、その切り口から主幹部にまで枯れ込みが入っている。

 ・主幹部に裂傷が発生している。

 ・胴枯病の発生が多い。

 ・枝が軟弱徒長している。

vol.63
2022.10

モモ園土壌物理性と核割れ発生

  • モモの核割れは、品種や栽培管理以外に土壌物理性の影響も少なくありません。
  • 果樹試験場によると、核割れが多く発生する園土壌は硬く透水性は悪く気相率(土壌中に含まれる空気の割合)が低い傾向にあります。
  • 基肥を施肥する際には有機物による土作りも同時に行ないましょう。
  • これにより土壌水分の急激な変動が緩和され収量や果実品質が低下しない安定栽培の実現につながります。
モモ核割れ発生園の土壌硬度
(品種:白鳳、果樹試験場成果情報)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.62
2022.9

暑かった夏が終わりに近づく

  • 今夏の気象を果樹栽培面から振り返ります。
  • 梅雨期間中の気象変動は大きく、一度発表された梅雨明け日が7月23日に変更される程でした。全般には山梨県下において気温が平年より高く、降水量は少ない傾向でした(表)。
  • 6~7月の平均気温は過去50年間で4番目と高温傾向が顕著でした(図1)。
  • 特に6月下旬は日射量が強い状況が続き、摘粒作業中の幼果で一時的に日焼け症状を発生しやすくなり、クラフト傘などによる遮光処理が必要でした。
  • 反対に、夏季を通した6~8月の降水量は過去50年間で9番目の少なさでした(図2)。
  • このため、砂地や粘土質土壌の園地を中心に乾燥害を受けないようにスプリンクラーやポンプによる潅水を行いました。
  • 一方、雨水が感染源となるべと病等の病害の発生については農業共済への被害申請数は9月上旬時点で少ない状況です。
  • これらの苦労が実り、また日照時間に恵まれ9月上旬時点で巨峰・ピオーネ、シャインマスカット等の主力品種の出荷が順調に進んでいます。
  • 今夏の経験は、温暖化が進行する状況において、潅水施設の整備安定栽培技術新品種開発の重要性を示しています。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

幹は水の通り道

vol.61
2022.9

  • モモに限らず樹木は、水分をにより吸収し、を通して枝に送り、葉面から蒸散させて気化熱により樹体の温度が上がり過ぎないように冷却しています。
  • 途中にある幹は根から上に向かう水の通り道です。枝の本数が多く、葉の枚数が多い樹(樹冠容積の大きい樹)では吸い上げる水量が多いので通り道である幹が太くなります(図1)。
  • 図1において、きれいな直線に乗らないのは、実際には品種や樹齢や園環境に応じて樹冠容積は調整されることが多く、関係が崩れやすいと考えられます。
  • 次に、モモ樹の根に近い主幹部の断面積を測る際に、その上の二股に分かれた第1主枝と第2主枝の断面積の合計値も測り、関係を求めました(図2)。
  • その結果、主幹部の断面積と主枝断面積合計値の間には明瞭な1:1に近い直線関係が見られました(図3)。
  • 樹の幹とは水を通すパイプとの様な物と考えられ、主幹が主枝に分岐しても、通る合計水量は変わらないので主枝ごとの断面積の合計値と主幹断面積値はほぼ変わらないわけです。
  • ただし、図3では主幹の断面積が0.05㎡以上と大きくなると主枝断面積合計値が低くなり、次第に1:1の関係から離れていきます。
  • これは幹の太い大木では高い位置まで水を引き上げる必要があるので、主枝をすぼめて樹体内圧が低下しないよう調整し、水分の上昇を維持しているためと考えられます。
図1 モモ主幹の太さと樹冠容積の関係
図2 モモ主幹と2つの主枝(模式図)
図3 主幹断面積と主枝断面積の関係

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.60
2022.8

本当に勝沼は暑い?

  • 最高気温測定地点としてすっかり常連となった勝沼について、「あれ、昔からそんなに暑いところでしたっけ?」と若干の戸惑いを感じています。
  • 近年、猛暑日(最高気温が35℃以上の日)の年間日数は温暖化により国内各地で増加の傾向にあります(図)。
  • 2010年以前の勝沼では、他の常連地に比べて猛暑日の日数はむしろ少ない傾向でしたが、それ以降肩を並べています。
  • この急上昇の原因は不明ですが、現在、国内有数の酷暑地点であることは否定できません。樹だけでなく人の健康管理の重要性もますます高まっています。

ブドウ泥棒を防ぐために

  • トウモロコシやモモ、スモモ等農産物の盗難被害が発生しています。最近の手口の特徴は、計画的で大胆な点です。未解決のままになる場合が大半であり、解決しても賠償されない場合も多く、被害農家は減収とともに精神的ショックを受けます。
  • 今後、シャインマスカットの本格的な収穫期に迎えるにあたり、以下の点に留意しながら主に未然防止の視点から農作物盗難対策を進めましょう。
  1. ネットや柵等の設置。
  2. 「盗難注意」「立入禁止」「農薬散布直後」等の看板やのぼり旗の設置。
  3. 防犯カメラ、センサーライト等の設置。
  4. 周辺に「防犯カメラ作動中」等ステッカーや看板等の設置。
  5. 盗難防止パトロールの実施。
ブドウ盗難防止用ネット

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

モモ園の潅水の重要性

vol.59
2022.8

  • モモ園においては、水が絶えず出入りしています(図)。
  • 樹はを通して年間745mmの水を吸収し、果実を生産する他、葉からの水蒸散により樹体を冷却し、適温に保っています。
  • 園に入る降水量は年間1164mm程度です。しかし、降雨の一部は、地下浸透や地表面流去するので全量吸収は困難です。
  • そのため、夏季には土壌が乾燥しない様に定期的な潅水により水分を補う必要があります。
  • 収穫後も園の状態を見ながら忘れずに潅水を実施しましょう。
図 モモ園における年間の水の動き
(6年間の試験結果)

高山植物は温暖化における「鉱山のカナリア」

  • 今夏は梅雨明けが早く、猛暑が続き、日焼け等高温障害の発生が話題となり、地球温暖化を実感します。
  • 地球は長い歴史の中で寒冷化、温暖化を繰り返しています。氷河期に分布が広がり、その後温暖化につれて南アルプス等の標高が高く、気温が低い山地に取り残された植物高山植物と呼ばれています。
  • かろうじて残っている植物ですので環境変化には敏感で、温暖化により生育域縮小等の影響を受けます。
  • かつて、鉱山で鉱道の毒ガス感知に用いられたカナリアに例えて、高山植物は温暖化による変化をいち早く知るための「鉱山のカナリア」と言われています。

ニッコウキスゲ
(南アルプス高山植物保護ボランティアネットワーク)

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.58
2022.7

1日で発生する日焼け果

  • 梅雨明け直後の日射量が強い条件では果房の肩部分の果粒が委縮して茶色に変色する日焼け果が発生します(写真)。
  • 摘粒がやっと終わり、袋掛けが完了し、長雨から解放され、これから本格的な果粒肥大や糖度上昇を期待する矢先のことです。
  • 特に果房の肩口が欠けてしまうとしまうと房形や果房重が十分と言えなくなってしまうので栽培者の落胆は大きくなります。
  • 対策法のポイントは2点です。まずは、土壌が乾いていればスプリンクラーで2時間程度のかん水をしましょう。
  • また、クラフト紙のカサ使用新梢の誘引により日光が直接果房に当たり高温にならない様にしましょう。
シャインマスカットに発生した
日焼け症状

線状降水帯の予測開始

  • 線状降水帯とは、次々と発生する積乱雲が列をなし、同じ場所を通過または停滞することで、線上に伸びた地域に大雨を降らせるものです(図)。
  • 本年6月に気象庁は線状降水帯による大雨の可能性を予測し、まずは大まかな地域を対象に半日前からの情報提供を開始しました。
  • 図の例では、雨が降る地域が線上に50km以上細長く伸び、その中心部では3時間で200mm以上の大雨が続いていました。
  • 梅雨末期以降は予報に注意しましょう。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

この様なモモの剥き方はいかが?

vol.57
2022.7

  • モモを剥く方法についてサイト検索し、より良い方法を検討しました。
  • 調べた23サイトの約8割で以下の方法を推奨していました。
  • 果実の縫合線に沿って周囲に切れ込みを入れ、ルービックキューブ式に左右を別々に回転させて半分に割った後、さらにナイフで細分する方法です(図1,2)。
  • ただし、過熟果実ではこの方法により果肉が崩れやすいので初めからナイフで8分割します。
  • また、硬い果実の皮を剥く際には、沸騰した湯に5~10秒間漬けると皮が指で剥けるようになります(図3)。
  • このように剥き方が工夫されるのは、貴重な果実を残さず十分に味わおうとする消費者意識の現れでしょう。
図3 沸騰水処理により皮が剝け易くなる

増加する果物輸出

  • 輸入額はバナナを筆頭に、上位5位の合計額は県産果実生産総額の約4倍に相当します(表)。
  • 一方、輸出額は上位5位までの合計額が輸入額の1/10に過ぎず、今後は大幅な増加が予想されます。
  • 現状ではリンゴが全体の輸出額の約半分に相当し、台湾、香港、東南アジア等温暖な国で人気果物です。
  • ブドウ、モモの輸出額は最近5年間で50%以上急増しています。
  • 各果実の現地価格は国内価格の3~5倍と高く販売されています。円安基調も後押しとなり、今後も輸出額の増加が期待されています。

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NOSAI山梨果樹農家だより(ブドウ)

vol.56
2022.6

ブドウ台木とフィロキセラ

  • ブドウに台木を使う理由は複数ありますが、最大の理由はフィロキセラ(ネアブラムシ)対策です。
  • ブドウは挿し木をすれば、台木を使わない自根でも栽培できます。しかし、根にフィロキセラという虫が寄生してブドウの樹を弱めます。
  • フィロキセラ抵抗性台木を用いると影響なくブドウ栽培が可能となり、現在では全世界で普及しています。
  • 1860年代のフランス(ブドウ栽培面積約230万ha、日本現面積1.7万ha)では当時主流であった自根樹のほとんどがフィロキセラにより壊滅状態に陥りました。
  • 抵抗性台木による解決法を研究したG.Foëxの功績を称えてフランスのモンペリエには乙女が老女を抱き起す銅像が立っています。
モンペリエ農業科学高等教育国際センター内の
記念碑
 (画像引用 wikipedia より)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Gustave_Fo%C3%ABx

シャインマスカットの開花異常

  • 一昨年頃から開花時に花冠が離脱しない等の異常症状がみられます。
  • そのような房は果粒となっても肥大しないで、変形果二重果となってしまいます。
  • この症状は開花前の花蕾表面にスジがなく、丸くツヤがある場合多いの で判別基準の一つになります(図)。
図 異常花蕾判別 (山梨県果樹園芸会発行山梨の園芸5月号)
  • 本症状の根本原因は不明ですが当面の対策として以下が考えられます。
  • まず、房づくりの時期を多少遅らせて開花異常の兆候を識別します。開花異常は主穂先端部に多くみられるので、異常症状が認められる場合は正常な上部支梗を使った房づくりに変更を検討して結実確保に努めます。

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NOSAI山梨果樹農家だより(モモ)

農薬を溶かす順序

vol.55
2022.6

  • 農薬は混用で散布する場合が多く、調整時に沈殿や変性を起こす場合があります。各農薬が均一に溶けて十分な効果を発揮するためには順序を守る必要があります。
  • まず、混用が可能な農薬どうしか防除暦に添付されている事例集で確認します。
  • 水に溶かす順序は、溶けやすい農薬から溶かす点です(図)。
  • 最も溶けやすい農薬は展着剤()と液剤。次に乳化剤を含む乳剤()。フロアブル剤、果粒水和剤、水和剤は全て水和剤()です。「てにす」と覚えましょう。
  • ただし、この基本には例外が多く存在します。例えばモベントフロアブルは最初に溶かします。必要に応じて相談願います。
図 農薬を溶かす順序(てにす)

降雨による除草剤処理効果への影響

  • 使用機会の多いグリホサート剤について処理後の降雨の影響を調べました(図)。
  • 試験条件:イネ科雑草が地表を覆うモモ園を1辺2~3mで区画化し100倍液を散布処理。:散布後24時間は降雨なし。水色:散布2時間後に十分な水を動噴で散布し洗浄。:散布液に展着剤サーファクタントwk500倍を添加し処理後同様に水洗浄。
  • 結果は3処理区の除草効果は何れも十分でした。雑草は2週間で一掃されます。
  • 天候が不安定な時期ですが散布後2時間降雨がなければ除草効果は現れます。
図 グリホサート剤処理効果への降雨の影響

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